集学的治療 について【健康があいことばvol.07】

集学的治療 について

最近のがん治療では、協力・連携がとても重要視されています。そこで今回は、 集学的治療 やチーム医療について、相澤病院 がん集学治療センター長の田内克典医師にお話を伺ってきました。

集学的治療

相澤病院 がん集学治療センター長
田内 克典

◇ 今、なぜ「集学的治療」

集学的治療とは様々な治療を組み合わせる治療法のことです。現在では4つの治療法「手術療法」「化学療法」「放射線治療」「緩和ケア」を柱として総合的に行う治療を意味します。
しばしば、集学的治療は新しい治療法でベストな治療法、と思われている方がいますが、必ずしもそうではありません。集学的治療という言葉は十年以上前からありましたし、集学的治療が”常に”最良の治療法とも限りません。例えば、大腸がんにおける理想の治療は、体への負担が少ない内視鏡手術による単一療法です。
では、なぜ集学的治療が最近注目されているのでしょう。それは、今まで治療成績が芳しくなかった化学療法(抗がん剤治療)や放射線治療などが、手術以外のがん治療として確立してきたからです。
 

◇ 集学的治療が推奨されるケース

体への負担を考えると、単一療法が最良の治療法です。しかし、集学的治療の方が効果的な場合も多々あります。例えば、がんが大きくて完全な切除が困難な場合。あるいは、周囲の臓器や神経などを傷つける恐れのある場所にがんがあるケース。このような時には、手術前に抗がん剤でがんを小さくして、それから手術できれいに取り除いた方がより高い効果が期待できます。
他にも、集学的治療が推奨されるケースは多くあり、手術の後に抗がん剤で確実性を高める治療や、放射線‣抗がん剤・緩和ケアを組み合わせた治療もあります。
 

◇ 治療方針の決め方

集学的治療では、それぞれの異なる領域において非常に高い専門性が求められます。いくら医師と言っても、オールマイティなわけではありません。やはりがん治療には、手術の専門、化学療法の専門、放射線療法の専門などが集まって、意見を出し合って方針を決めるべきです。
ですから、集学的治療が注目されるに伴い、それぞれの専門科が集まって、患者さん一人ひとりの治療方針を決定する会議「キャンサーボード」が重視されるようになりました。
相澤病院でも毎週、臓器別キャンサーボードを行っています。そこには、外科・内科・化学療法科・放射線治療科などの医師が一堂に集まり、患者さん一人ひとりの治療法を検討しています。
 

◇ ”医師”による治療方針か ”病院”による治療方針か

キャンサーボードを経た治療方針は、担当医一人の治療方針ではありません。病院が提示し、病院が品質保証するケアプランです。セカンドオピニオンは「別の医師による、第2の意見」ですが、キャンサーボードは各専門科の意見をまとめたプランです。
患者さん一人に何十人もの医師がかかわる。これは非常に難しいことです。しかし、がん治療において化学療法や放射線治療などが確立した今、それぞれの専門医が意見交換して方針を決定することは、間違いなく最良の手法です。現に、厚生労働省もキャンサーボードの設置を推奨しています。
また、相澤病院がん集学治療センターでは「全症例カンファレンス」と言って、担当医や看護師が集まって、翌日治療する患者さん全員の状態・治療経過をチェックしています。
医師による治療ではなく、病院として治療にあたる。
今後も相澤病院は、医師ばかりでなく、多職種全員で本当の「チーム医療」を継続してまいります。
 

◇ 「紹介」という治療

先ほど、「医師はオールマイティではない」とお話しましたが、病院もオールマイティではありません。がんの状況によっては、他の病院が適していることもあります。
そんな時、相澤病院は他院を積極的に紹介しています。
直接治療するだけが医療ではありません。患者さんにとって最良の治療が他で受けられるなら、その病院を紹介することも医療です。
最近は、地域における医療連携も充実しています。当院も昨年度、信州大学医学部付属病院、長野県立こども病院と治療連携協定を締結し、小児腫瘍の陽子線治療を円滑かつ安全に行うために地域の連携を強化しました。
他院も含め、患者さんに最良の医療を提供する。
これが最も大切ながん治療ではないでしょうか。
 

◇ 厚生労働省が指定 地域がん診療連携拠点病院

地域がん診療連携拠点病院とは、全国どこでも質の高いがん医療が提供できるよう、厚生労働省が全国に指定した病院です。専門的ながん医療の提供、地域のがん診療の連携協力体制の構築、そして、がん患者さんに対する相談支援及び情報提供等が主な役割です。
相澤病院は地域がん診療連携拠点病院に指定されています。そのため、国から「がん患者支援センター」の設置が求められていますが、当院ではご家族の不安も軽減したく、「がん患者・家族支援センター」としています。
「医師には聞きづらいけど」と、がん患者さんご本人ばかりではなく、ご家族からも多くのご相談をいただいています。不安やお悩みのある方は、決して一人で抱え込まないでください。
 

◇ 治療成績こそ最も重要な情報

2016年1月、がんで亡くなる方を減らすため、がん患者さんの情報を収集・整理する「全国がん登録」が始まりました。この制度により、医療機関は治療成績などを国に提出することが義務づけられました。
治療成績は患者さんの権利(治療法を自分で選ぶという権利)を行使するためにとても重要な情報です。というのも、例えば「5年生存率」など、治療5年後にどれだけの方がお元気なのか、といった治療成績を知らなければ、治療法など選ぼうにも選べないからです。
そのために、相澤病院ではホームページ等で治療成績を公開しています。しかし、日本の医療機関の大多数は、まだ治療成績の公表に至っていません。
アメリカでは治療成績の公表は義務化されています。近い将来、日本でも治療成績の公表が義務化され、すべての患者さんが安心して、納得した治療が受けられるようになることを心から願います。

 
■相澤病院 がん集学治療センターとは■
http://www.ai-hosp.or.jp/shinryo/a_center_1.html
化学療法科、緩和ケア科、腫瘍精神科および放射線治療部門があり、この各科に総合的にかかわる看護科、事務部門、がん患者・家族支援センター(がん相談支援センター)から構成。各専門診療科で行なう手術療法等とがん集学治療センター各科の治療などを加え、患者さんにあった集学的治療を目指す。
 
相澤病院のサイトはこちら
http://www.ai-hosp.or.jp

 
ライター:上田雅也
※この記事は、コンパス第12号(平成29年3月31日発刊)に掲載されたものです。

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