【相澤病院】山岳事故を防げ!山岳医 に聞く「夏山」の注意点

  1. 健康

相澤病院の「健康があいことば」
山岳事故 を防げ!山岳医 に聞く「夏山」の注意点

山の日が制定され、登山や山岳観光による信州の活性化が期待できる一方、 山岳事故の増加も懸念されています。熱中症や高山病など、夏山で気をつけるべきポイントとは。国内山岳医の資格を持つ神徳医師にお話を伺ってきました。

相澤病院の「健康があいことば」vol.04

▼目次
1.山と平地での環境の違い
2.登山の運動強度は ジョギングと同じ
3.持病がある方へ
4.高山病の何が怖い?
5.もしもの時の呼吸法
6.高山病の予防
7.本当に怖い熱中症
8.効率的な身体の冷やし方
9.適切な水分補給の仕方

山岳医

相澤病院 救命救急センター 救急科 医師
日本登山医学会認定国内山岳医
神徳 隆之

1.山と平地での環境の違い

高地は平地と比べて自然環境が異なります。気温が低く乾燥しており、酸素量は減少します。救急医療の環境にも大きな違いがあります。ヘリコプターは救急車と違って、いつでもすぐに出動できるとは限りません。天候によっては出動が翌日になることもあります。また、莫大な費用がかかることもあります。山の中と平地では、環境面における相違点がたくさんあります。登山を決して軽く見ず、入山前は必ず入念な準備をしましょう。
 

2.登山の運動強度は ジョギングと同じ

運動強度を表す単位に「メッツ(METs)」というものがあります。平静時は1メッツで、登山はジョギングと同じ7メッツです。つまり、4時間の登山は4時間のジョギングと同等の運動強度を誇ります。いきなり数時間ものジョギングをする人はいません。日々のトレーニングにより、登山に耐えられる体作りを心がけましょう。
 

3.持病がある方へ

高所は寒冷刺激が強くなります。喘息をお持ちの方は、朝方に冷たい空気を吸い込むと発作が出やすくなります。マスク等で温度差を緩和する工夫をしましょう。また、山では平地より血圧が上がります。血圧に不安のある方は、目安として上で200mmHg、下で120mmHgを超えた場合は下山しましょう。心房細動などがある方は、薬の効果が変動することがあるので注意が必要です。また、脱水は非常に危険です。いつも以上にまめな水分補給を心がけましょう。糖尿病の方は、登山中は適時に血糖値を測りましょう。登山は血糖値を大きく下げる運動です。特にインスリンを服用している方は、いつも通りの投与は低血糖に陥る場合があります。注意しましょう。持病があっても登山は楽しめます。ただし、薬の服用などにより発作をコントロールできていることが条件です。状態が安定している方は、かかりつけ医に相談してみましょう。
 

4.高山病の何が怖い?

一般的に、高山病は2,000m以上で発症しますが(美ヶ原の標高が約2千メートル)、年配者の中には1,500mで発症する方もいます。高山病の特徴は、高地に到達してしばらくすると発症し、頭痛を伴うことです。そこに、めまい、ふらつき、倦怠感、吐き気や食欲不振などの消化器症状などが加わります。高山病が恐ろしいのは、重症化した場合です。肺に水がたまる「肺水腫」や、脳が水分でむくむ「脳浮腫」など深刻な症状が出現し、時に死に至ることもあります。
 

5.もしもの時の呼吸法

高山病が疑われたら、すぐに下山しましょう。下山は高山病に最も効果的な治療です。下山以外には「口すぼめ呼吸」も有効です。ゆっくり深く息を吸い込み、口をすぼめて吐く呼吸法です。低酸素欠症などにも効果的です。
 

6.高山病の予防

歩行ペースは一時間に標高300メートルを基準とし、適切な水分補給を実行しましょう。また、登山前の体調管理も重要です。夜行バスなどで睡眠不足の方は、高山病を含め体調不良を訴える頻度が高い印象です。登山前はアルコールの過剰摂取は控え、充分に睡眠を確保しましょう。
 

7.本当に怖い熱中症

登山中は汗や呼吸により、多くの水分と塩分を失います。そのため、熱中症のリスクが非常に高まります。熱中症の症状は、めまい、たちくらみ、こむら返り、異常な発汗、嘔吐などがありますが、ぼーっとするなど意識障害が出現したら危険です。平地ならすぐに救急車を呼び、登山中なら迅速かつ適切な処置(身体の冷却と水分補給)が求められます。
 

8.効率的な身体の冷やし方

直接水を浴びるより、服を濡らしたり、濡れたタオルを肌に当てた方がより効率的に身体が冷やせます。肌を濡らしてもすぐ乾きますが、衣類は肌より乾くのが遅く、気化熱による熱放散の促進もあるからです。
 

9.適切な水分補給の仕方

熱中症の場合、真水やお茶は水分補給に適していません。むしろ血中の塩分濃度が下がるため逆効果の場合もあります。一方、スポーツドリンクは適しています。が、熱中症が疑われる場合は、塩分が多く糖分が少なめの経口補水液が最適でしょう。登山中の適切な補給量は、自分の体重×行動時間×5mlです。少なくともその七割は摂取しましょう。今年の夏も暑くなるようです。山の中だけでなく、日頃から適切な水分補給を心がけましょう。

山岳医 _水分補給

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ヘリポートも山岳医も備える相澤病院の救命救急センター。私たちが安心して山に親しむことができるのも、こうした環境が身近にあるからかもしれません。山の日を契機に一層の山岳医療の発展を望みます。

 
■相澤病院  救命救急センターとは■
http://www.ai-hosp.or.jp/shinryo/b_center_3.html
「断らない救急」を掲げ、24時間365日、軽症から重症まで全ての救急患者さんを受け入れている。通称、相澤ER。様々な疾患を診る救急科の医師が受け入れ、必要に応じて各専門の医師と連携し診療にあたる。
 
相澤病院のサイトはこちら
http://www.ai-hosp.or.jp

 
ライター:上田雅也
※この記事は、コンパス第9号(平成27年6月30日発刊)に掲載されたものです。

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