相澤病院の「健康があいことば」
大腸がんを早期発見 するには
大腸がんは日本人に最も多いがんです。しかし、大腸がんは治らない病気では決してなく、早期発見できれば完治が見込める病気です。では、どのような検査を、どのように受けたら良いのでしょう。相澤健康センターの高木医師にお話を伺ってきました。
相澤病院の「健康があいことば」vol.14
▼目次
1.長生きすればするほど、大腸がんには罹りやすくなります
1-1.なぜ大腸がんが危ないのでしょうか?
1-2.大腸がんの早期発見は、健診で十分でしょうか?
1-3大腸がん検診はどんな人が受けるべきでしょうか?
2.便潜血検査で陽性反応が出たら、必ず病院で精密検査を受けるべきです。
2-1.早期発見の課題となっているのはどんなことなのでしょうか?
2-2.なぜ4割もの方が精密検査を受けないのでしょうか?他に検査方法はないのですか?
3.大腸CT検査が普及すれば、大腸がんは、きっと減らせると思います。
3-1.便潜血検査・大腸内視鏡検査・大腸CT検査、それぞれの特徴を教えてください。
3-2高木先生が思い描く、大腸がん早期発見について教えてください。
◇ 長生きすればするほど、大腸がんには罹りやすくなります
そう警鐘を鳴らすのは、人間ドックやがん検診で様々な病気の早期発見に尽力している、相澤健康センターの高木医師。中でも大腸がんは検診が特に大切だと話す。いったい大腸がんはどうすれば早期発見できるのか。高木医師に訊ねた。
-- なぜ大腸がんが危ないのでしょうか?
がんは昭和56年から日本人の死因第1位で、近年では総死亡の約3割を占めます。中でも大腸がんは増加傾向にあり、近年、全がんの中でも罹患数は1位、男女計で死亡数が2位です。
大腸がんは40歳以降から増え始め、以降は長生きすればするほど罹患率が高まります。ですから、私たちは定期的な検診を推奨しているのです。
-- 大腸がんの早期発見は、健診で十分でしょうか?
健診とは健康診断のことです。病気の危険因子の有無、あるいは健康かどうかを調べることが目的なので、大腸がんなど特定の病気を発見するには不向きです。
一方、検診とは特定の病気にかかっているかどうかを調べるために行う診察や検査のことです。特定の病気を早期に発見し、早期に治療することが目的です。
-- 大腸がん検診はどんな人が受けるべきでしょうか?
便に血が混じる方、腹部症状のある方、過去に大腸ポリープを指摘された方、血縁に大腸がんの既往がある方は、大腸がん検診を受けるべきです。しかし、これらに当てはまらない方も、40歳をすぎたら大腸がん検診は毎年受診すべきでしょう。冒頭でもお話しした通り、およそ40歳を境目に、年齢を重ねるごとに罹患リスクが高まりますから。
◇ 便潜血検査で陽性反応が出たら、必ず病院で精密検査を受けるべきです。
大腸がんの早期発見には、定期的ながん検診が重要と話す高木医師だが、実は医療技術以外のところで大きな課題があると言う。大腸がん早期発見の障壁について解説をお願いした。
-- 早期発見の課題となっているのはどんなことなのでしょうか?
その前に、大腸がん検診について説明させてください。
一般的に大腸がん検診では、まず便潜血検査を行います。厚生労働省の調査によれば、この便潜血検査でおよそ6%が陽性反応を示し、さらにそのうち0.2%の方に大腸がんが発見されます。
相澤健康センターでは、便潜血陽性者(要精密検査と診断された方)の受診状況と受診結果について追跡調査をしています。そのデータによると、およそ4割の方が精密検査をしていません。
それほど多くの方が大腸がん早期発見の機会を捨てています。ですから、いかに要精密検査と診断された方に病院へ行っていただくか、それが私たちにとって早急に解決すべき課題です。
-- なぜ4割もの方が精密検査を受けないのでしょうか?
様々な理由が考えられますが、病院で行う精密検査「大腸内視鏡検査」への抵抗は大きな理由の一つでしょう。
大腸内視鏡検査は、直接腸内を観察します。そのため病変の検出能力が高く、病変があった時に組織を採取して検査することもでき、場合によってはそのまま治療することも可能です。
非常に高い精度を誇る検査ですが、デメリットもあります。前処置で下剤を2ℓ程度飲む必要がある上、肛門から胃カメラよりも太いカメラを腸へ入れるので、人によっては大きな苦痛を伴います。こうした身体的・精神的負担が、精密検査を避ける要因の一つと考えています。
-- 他に検査方法はないのですか?
あります。人間ドックのオプション検査としても行われている「大腸CT検査」です。
まず、大腸CT検査では下剤を飲みますが、大腸内視鏡検査の半分以下の量です。そして、肛門から細いチューブを使用して炭酸ガスを注入します。炭酸ガスは吸収性が高いため身体の負担が軽減できます。
前処理が終われば、10~20分程度の検査を行って終了です。撮影された画像は、内視鏡を大腸の中に入れなくても、あたかも腸の中を観察したかのように調べることができます。
しかし、大腸CT検査にもデメリットはあります。大腸CTで病変があった場合は大腸内視鏡検査が必要な点や、腫瘍性病変の確定診断や治療ができない点などです。
◇ 大腸CT検査が普及すれば、大腸がんは、きっと減らせると思います。
高木医師に、大腸検査の位置付けと展望を伺った。
-- 便潜血検査・大腸内視鏡検査・大腸CT検査、それぞれの特徴を教えてください。
便潜血検査は、手軽ですが出血を伴う場合に限り有効です。また、便潜血検査が陰性の場合でも病変がある為、陰性が心配です。
大腸内視鏡検査は、身体的・精神的負担は高いものの、精度も非常に高く、治療への移行もスムーズです。
そして、大腸CT検査は、確定診断や治療ができないものの、大腸内視鏡検査よりはるかに苦痛が軽減されていて、精度も高い検査です。6mm以上の腫瘍性病変について、大腸内視鏡検査に対し非劣勢であることも証明されています。
近年、CT技術の進歩により、画像が非常に鮮明となったため、相澤健康センターでも平成29年に大腸CT検査を導入しています。
-- 高木先生が思い描く、大腸がん早期発見について教えてください。
私は長らく消化器内科医として治療や検査に携わってきました。世の中から大腸がんで苦しむ方を減らすためには、大腸がん検診の定着と、精密検査の未受診率低下の現実が急務です。この二点の実現に、大腸CT検査は非常に有用だと考えています。
また、大腸CT検査は、精密検査としてはもちろん、大腸がん検診の一次検査としても行うことができます。
これまでにご紹介した3つの検査方法を一人ひとりに合わせて上手に活用し、より多くの大腸がんを早期に発見する。それが医師として、私のなすべきことです。
- 取材協力 -
相澤健康センター
統括医長
高木 健治
http://w3.ai-hosp.or.jp/health/
相澤病院のサイトはこちら
http://www.ai-hosp.or.jp
ライター:上田雅也
※この記事は、コンパス第19号(平成30年12月28日発刊)に掲載されたものです。