【相澤病院】がん医療が「治す」を超えるとき

  1. 健康

相澤病院の「健康があいことば」
がん医療が「治す」を超えるとき

依然、増加するがん患者。今年で開設12年目を迎える相澤病院がん集学治療センターは、地域のがん治療の中核的存在として、どんな治療を行い、どんな医療を目指しているのでしょう。

相澤病院の「健康があいことば」vol.15

▼目次
1.早い人は早い。遅い人は遅い。二極化が進む、がんの発見。
2.主治医一人に任せない。病院が総力を上げて、一人ひとりを診る。
3.「どれだけ生きられるか」ではなく、「どれだけ生活できるか」。

 
がん集学治療

1.早い人は早い。遅い人は遅い。二極化が進む、がんの発見。

そう話すのは相澤病院がん集学治療センター長の三島医師だ。昔と比べて進行度(ステージ0~Ⅳ)の中で、ステージⅡでの発見が減り、ステージⅠとステージⅣでの発見が増加傾向にあるそうだ。

-- なぜ二極化が進んでいるのでしょうか。
がん患者さんは今も増加していて、生涯でがんに罹患するのは二人に一人の割合です。がんに対する意識は非常に高まっていて、毎年、人間ドックを受ける人も少なくありません。そうした方はがんに罹患しても早期に治療が開始できるので、予後も順調な傾向にあります。
反対に、がんに対する意識が低い人もいて、例えば便潜血検査で要精密検査となっても、病院を受診しない人がいます。そうした方はがんの発見が遅くなる傾向にあり、実際、腸が詰まって破裂寸前で来院される方が後を絶ちません。
このように、意識の違いががん発見時の進行度に反映されていて、早くに発見できる人とそうでない人の差が大きく広がりつつあります。

-- 意識を高めるということは?
死亡率の高い肺がんでは、50歳以上の喫煙者が毎年、非喫煙者は2年に1回のCT検診が推奨されています。大腸がんは、便潜血検査が陽性反応であれば、必ず精密検査を受けるべきです。
ここ最近の5年生存率は年々高まっていて、医療の進化が伺えます。しかし、いくら世の中が進んでも、人の意識が変わらなければ結果は変わりません。定期的ながん検診こそ「意識を高める」ということです。
 

2.主治医一人に任せない。病院が総力を上げて、一人ひとりを診る。

がんで祖母を亡くし、手術の重要性を再認識した三島氏が志したのは、技術を自分の努力次第で高められる外科医だった。
そんな三島医師は、化学療法や放射線療法など、他のがん治療法をどう考えるのか。

-- 外科医として他の治療法に対する懐疑心や隔たりはなかったのでしょうか。
正直、ないですね。がんの種類や進行度に合わせて、抗がん剤などの化学療法や放射線療法を組み合わせて行う「集学的治療」が昔からありましたので。
しかし、私が医師になりたての30年ほど前は、抗がん剤があまり効きませんでした。放射線については、当時から効果が認められていたものの、今と比べて周囲の臓器を痛めてしまうリスクの高い治療法でした。そのため、がん治療は、がんだけではなくその周辺に渡って広い範囲の組織を取り出し、根こそぎがんを取り除く拡大手術が盛んになります。
これにより生存率は向上しました。しかし、大きく取る分、正常な臓器も取ってしまうので障害が残る人も少なくありませんでした。そこで今度は、「大きく取る」から「いかに小さく取って治すか」という考え方にシフトしていきます。

-- そこには考え方だけではない進化があったのでしょうか。
大腸がんは約20年前、肺がんが15年ほど前でしょうか。その頃からようやく抗がん剤のクオリティが上がり始めます。薬剤のみでなく、抗がん剤治療を続けるための支持療法や、話題の免疫チェックポイント阻害薬の実用化などにより、化学療法の効果は劇的に改善されていきます。
一方で、コンピューター技術の進化により、腫瘍に集中して放射線を照射できることで、放射線療法の陽子線治療やトモセラピーがその粋です。
このように、手術の進化の裏で他の治療効果も確実に上がってきたため、集学的治療はなくてはならないものとなりました。

-- 治療法はどのように選択されているのでしょうか。
相澤病院では、一つの専門領域の意見に偏った決定をしないために、様々な専門的見地から検討を進める「キャンサーボード」で、患者さん一人ひとりの治療方針を決めています。キャンサーボードに出席しているのは、内科、外科、放射線診断科、病理診断科、放射線治療科、化学療法科、緩和ケア科といったがん治療に関わる医師たちです。
手術のみといった単一療法で答えの出る時もあれば、化学療法を術前に行う集学的治療が採用されるケースもあります。いずれにしても、主治医の独断ではなく、病院がその患者さんに最良と判断した結果です。病院の総力を結集した治療方針なのです。
 

3.「どれだけ生きられるか」ではなく、「どれだけ生活できるか」。

近年、治すだけの「がん治療」から、次のフェーズ「がん医療」へとがんの業界は転機を迎えつつある。

-- がん治療はどこへ向かっているのでしょうか。
私は外科医です。がんは治せるのがベストですし、治すことが使命です。しかし、最新の医療をもってしても治せないがんもあります。そこで、治せない時にどうしていくか。それもまた、外科医の使命と考えます。
患者さんの生活を第一にし、がんと共存する。この考え方はその答えの一つでしょう。
例えば、拡大手術のように、がんを治してもその後の生活が辛くなるといった問題から、別の考え方が生まれました。その一方で、がんの増大を抑えたり、症状を緩和しながら共存していくという選択肢があります。つまり、高血圧や糖尿病など、慢性疾患の合併症を抑えるための治療と同じ方法もあるのでは、と考えるのです。

-- がんも同じようにできるのではないかと?
それが理想です。がんとの共存もがん治療の一つの方向ですから。
私は、生活の中にがんの終末期があることが理想と考え、25年ほど前から細々ではありますが、一つの方法として「がんの訪問診療」を行ってきました。
相澤病院でも必要な体制と対応を準備し、平成31年4月より、終末期のがん患者さんへの訪問診療を、組織として開始できる運びとなりました。
「どれだけ生きられるか」だけを追い求めてきたがん治療の時代は終わったと思っています。これからは「どれだけ生活できるか」を探求する新しい時代です。

 
- 取材協力 -
相澤病院
がん集学治療センター長
呼吸器外科 統括医長
三島 修
http://www.ai-hosp.or.jp/shinryo/a_center_1.html

相澤病院のサイトはこちら
http://www.ai-hosp.or.jp

ライター:上田雅也
※この記事は、コンパス第20号(平成31年3月29日発刊)に掲載されたものです。

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