【弁護士が解説】生前贈与で相続税対策
平成27年に相続税が改正され、今まで無縁だと思っていた方にも相続税の支払い義務が発生し始めています。相続税対策について、山本法律事務所の山本弁護士にお話を伺ってきました。
▼目次
1.相続税は他人事ではなくなった
2.年間110万円までの贈与は非課税
3.生前贈与の注意点
1.相続税は他人事ではなくなった
平成27年に相続税が大幅に改正され、相続税は「資産家に対する課税」ではなく、「大衆課税」へと変わりました。それに伴い、今までは相続税など無縁だと思っていた人も対象となるケースが頻発。対策すべき人の数は確実に増えています。そこで今回は、生前贈与を利用した相続対策をご紹介します
2.年間110万円までの贈与は非課税
生前贈与による最も一般的な相続対策は「110万円の基礎控除を利用した毎年の贈与」です。年間110万円までは非課税で贈与を行うことができます。例えば、10年にわたり相続人1人へ毎年110万円を贈与すれば、合計1100万円の財産が無税で移転できます。受贈者を3人に増せば、10年間で3300万円です。このように、早めに相続対策を始めることができれば、とても大きな節税効果が期待できます。
が、とは言っても、この方法は多額の相続財産がある場合や、すぐに相続が発生しそうな場合には効果ではありません。例えば、相続税が最高税率の55%かかる場合に、財産1億円を生前贈与するケースを想定します。年間110万円の贈与だと90年以上かかってしまいますが、年間1000万円の贈与だとわずか10年で終了します。もちろん、年1000万円に対して17.7%の贈与税の負担がありますが、単純に計算しても1億円×(55%−17.7%)=3730万円の節税となります(生前贈与加算の適用がないとした場合)。
3.生前贈与の注意点
お話ししてきた通り、効果的な生前贈与による対策を講じるには、今相続が起こったら「税額はいくらなのか」「相続税の税率は何%ゾーンになっているのか」を把握することが大切です。また、生前贈与加算の規定により、相続開始前3年以内の贈与については相続税に加算されます。つまり、亡くなる前の3年以内の生前贈与はなかった扱いになります。ただし、その対象に孫は含まれません。相続対策は早い時期から贈与を開始し、生前贈与加算の対象とならない孫などへの贈与を併用することが効果的でしょう。
相続税の節税対策は、早くから実施することで節税効果のメリットが受けられるものが多くあります。また、何より早くから相続を考えることは、「争続」を防ぐことにも有効です。私ども弁護士を始めとする専門家に相談するなど、早めの対策をおすすめします 。
― 取材協力 ―
山本法律事務所
長野県松本市島立798-1 YSビル102
弁護士 山本 賢一 氏
http://www.yamamoto-lo.jp/