【心の相続】呼び寄せ高齢者が、必ずしも幸せにならない訳

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【心の相続】呼び寄せ高齢者が、必ずしも幸せにならない訳

「呼び寄せ高齢者」「呼び寄せ老人」「呼び寄せ介護」。最近、「呼び寄せ」という言葉をよく耳にしますが、実家で暮らす両親を呼び寄せる際に配慮すべきこととは。なぜ呼び寄せ高齢者が、必ずしも幸せになれるとは限らないのか。核家族化が進行した現代ならではの家族問題について考えます。


Aさんは夫に先立たれ、松本市の持ち家で一人暮らしをしていました。しかし、息子のBさん夫婦はそんなAさんが心配で、東京で一緒に暮らすことを提案します。特に義理の娘Cさんが、とても熱心に同居を勧めてきました。「夫は自分の親に最後まで尽くしてくれた。だから自分も義理の母に尽くしたい」。そう思ったそうです。

正直、Aさんは乗り気ではありませんでした。が、決心します。それまで暮らしていた家を売却し、東京へ引越して息子夫婦との同居を始めます。安心できる毎日、になるはずでした。が、現実は違いました。息子夫婦は仕事で、孫は学校。見慣れない風景は落ち着かず、話し相手は誰もいない。文字通り孤独な日々が続き、Aさんは友人に長電話ばかりするようになるとうつ気味になり、やがて認知症を発症。結局本人の希望でAさんは信州へ戻ることになり、家は売ってしまっていたので介護施設へ入居しました。

決して「呼び寄せ」が悪いわけではありません。この話で「悪」は一つもありません。ただ、家族の優しさが裏目に出ることもあるわけで、だからこそ、私は他の選択肢も知っておくべきだと言いたいのです。例えば、「任意後見契約」と「死後事務委任契約」の二つを締結しておく方法。この二つがあれば、判断能力が低下した際には「任意後見契約」が、死後のお葬式やお墓については「死後事務委任契約」がサポートしてくれます。家族に負担をかけることなく、自立した人生が送れます。

ふるさとの親をどう支えるか。

残念ながら、その命題に万人共通の正解はありません。しかし、そのヒントは家族の会話に隠れています。優しさだけでは解決できないこともあります。まずは家族でたっぷり会話の時間を設け、何が一番大切で、これから何を大切にしていきたいか。それぞれの想いを共有し、家族の想いをつなげることを始めてみてはいかがですか。

- 取材協力 -
蔵エンタープライズ
代表 板倉 富男 氏

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