【弁護士が解説】生死不明な相続人がいる時の遺産分割の方法
音信不通で所在が不明、あるいは生死不明な相続人がいる。こうした場合、遺産分割はどのように進めていけば良いのでしょう。山本法律事務所の山本弁護士に伺ってきました。
【質問】
父が先日死亡しましたが(父の遺言書はありません。)、相続人の1人である兄が8年前から行方不明です。父には相当な財産がありますが、遺産分割協議をすすめるにはどうしたらよいですか。
【解説】
遺産分割協議は相続人全員の同意がなければ成立しませんので、相続人の一部に生死不明者がいる場合には、そのままの状態で遺産分割協議をすすめることはできません。この場合の対処方法としては、以下のように、①生死不明者が生存しているものとして、不在者の財産管理人を選任する方法と、②生死不明者について失踪宣告を受けて死亡したものとみなす方法とがあります。
①不在者の財産管理人選任制度
相続人の1人である不在者が財産管理人を置かないで行方不明になったときは、利害関係人等が、家庭裁判所に対し、不在者の財産管理について、管理人を選任するなど必要な処分を命ずることの申立てをすることができます。財産管理人が選任された後、その管理人と他の相続人との間で遺産分割協議を行うことになりますが、遺産分割協議を成立させるためには、家庭裁判所の許可を得る必要があります。この場合、家庭裁判所は、原則として、不在者の取得分として法定相続分相当額を確保できることを許可の条件としているようです。
②失踪宣告制度
失踪宣告には、「普通失踪」と「特別失踪」があります。「普通失踪」は、不在者の生死が7年間明らかでないときに、利害関係人の請求により、失踪期間の満了時に死亡したとみなされる制度です。「特別失踪」は、戦地に臨んだ者、沈没した船舶の在船者など死亡の原因となる危難に遭遇した者の生死が、危難が去った後1年間明らかでないときに、利害関係人の請求により、危難の去ったときに死亡したものとみなされる制度です。この場合、失踪宣告の審判確定後に、失踪者の相続人が加わって遺産分割協議を行うことになります。
【まとめ】
いずれの申立てを選択するにしても、遺産分割協議が相続税の申告期限内に終わらないときは、未分割のまま法定相続分で相続したものとして申告することを要します。なお、不在者がいるような場合には、生前に遺言書を作成しておくことで、上記のような煩雑な手続きを回避することができます。
― 取材協力 ―
山本法律事務所
弁護士 山本 賢一 氏
http://www.yamamoto-lo.jp/