スポーツ障害 予防について【健康があいことばvol.01】

  1. 健康

スポーツ障害 予防について【健康があいことば】

ケガを予防して、スポーツを楽しむには 〜 スポーツ障害 予防について〜
 
スポーツの秋なのに、膝や腰が・・・。そんなお悩み、ありませんか。
今回はいつまでもスポーツを続けるために重要な「スポーツ障害予防」について、専門家の村上医師にお話をうかがいました。

スポーツ障害 予防について_村上医師

相澤病院 スポーツ障害予防治療センター
統括センター長 整形外科専門医
村上成道

◇ 万人に必ず効く、はない

近年、様々な健康法や運動がメディアで紹介されています。しかし、それらに取り組んで、時折調子を崩す人がいます。なぜそんな事が起きるのか。それは、その運動がその人の身体に合っていないからです。筋力や柔軟性など、身体の状況は人それぞれです。過去にケガをしたかどうかも、重要な判断要素です。薬は症状に応じて、自分の体に適したものを服用します。運動も同じです。身体の状態に応じて、自分に適したものに取り組む必要があるのです。
 

◇ 自分の身体を知る大切さ

ケガをしにくい身体は、老若男女同じです。「筋力」「柔軟性」「バランス」。この三つが、全世代でキーワードになります。いくら筋力があって柔軟性に富んでいても、それらに大きな左右差があればケガの原因になります。ひざ痛に関しても同じです。「筋力」「関節の柔軟性」が乏しければひざ痛を起こしやすいですし、左足と右足で筋力や関節の柔らかさが大きく違えば、それも原因となりえます。注意して欲しいのが、競技スポーツ(ゴルフやテニスなど)をされている方です。たいていの方が、それ一つしかされていません。ゴルフやテニスは、左右で筋力差が生じやすい運動です。ですから、ジョグや水泳、筋力トレーニングなど、+αとなる基礎的な運動も併せて行うことをおすすめします。そうした取り組みは、パフォーマンス向上にもつながります。実際当院に通われている方で、競技スポーツに+αの運動を取り入れ、新たな身体の使い方を覚えて技術を向上させている60代の方は何人もいます。いずれにせよ、自分は筋力不足なのか柔軟性不足なのか、あるいはバランスがよくないのか。まずは自分の身体を知ることがケガやひざ痛の予防につながり、ひいてはパフォーマンスの向上にも繋がるものと思います。
 

◇ 万一痛みが発生した際には

スポーツにおけるケガは二種類あります。骨折や捻挫など明らかに痛みの起点がある「外傷」と、オーバーユース(使いすぎ)などが原因で痛みの明らかな起点がない「障害」です。いずれのケースも、まずは運動を休止して下さい。そして、腫れがあるなら冷やして下さい。もし、その腫れが三、四日で引き、痛みもないなら再開していい場合があります。しかし、一週間しても腫れが引かない、あるいは痛みが消えないなら、病院での診察をおすすめします。これは外傷であろうと障害であろうと、あらゆる世代に共通する「判断の目安」です。
 

◇ 孫の夢と体を守る

ところで、小中学生や高校生が痛みを訴えた場合は、その子の夢や体を守る為にも、早めの診察をおすすめします。確かに今までは、多くの病院は、痛みを訴える子にはまず休止を言い渡しました。そのため、多くの子が痛みを我慢して練習を続け、結果、手術というケースも多々ありました。しかし、今は必ずしもそうではありません。少なくとも当院では、「スポーツを続けながら治療する」という方針です。練習を休まない治療なら、違和感を覚えた時点ですぐに医師にかかれます。早期治療で治療効果も上がります。将来にかかわるケガを抱える子も少なくない昨今。ぜひ皆さんにも、子どもの夢と身体を守るため、「練習を休まない治療もある」という事をご承知おきいただきたいのです。
 

◇ 運動処方、という心強い味方

先述の通り、運動は自分の身体に適したものをすることが大切です。しかし、自分の身体に適した運動というのは、なかなか自分にはわかりません。そこで、薬を処方するように運動を処方するのが「運動処方」です。運動処方の特徴は、その人が運動に取り組む目的も踏まえ、それぞれの身体に適した運動課題を決定することです。健康であり続けるために運動したい、競技で高いパフォーマンスを維持したいなど、自分の目的に沿って、自分の体に最適な運動をしたい。そんな方は、運動処方ができる医師のいる病院に相談してみて下さい。ちなみに相澤病院では、今年の九月に運動器ドックが開設予定です。このドックでは腰や膝の現況を検査し、運動器に関するアドバイスをいたします。また、ご希望の方には運動処方の上、継続的にフォローいたします(運動器ドックは、人間ドックのオプションとしても利用できます)。
 
最後に、ロコモティブシンドローム(通称ロコモ。骨、関節、筋肉など、運動器の衰えや障害により、要介護になったり、その危険度が高い状態)に対し、多くの方に効果的な運動を二つご紹介します。是非試してみてください。とはいえ、そもそも運動は義務ではありません。楽しんで取り組むものです。ですから、まずは天気のいい日に、散歩のついでに取り組んでみる、でも結構です。楽しむことを第一に、運動を生活に取り入れましょう。

予防 ロコモ予防体操

■相澤病院スポーツ障害予防治療センターとは■
http://ai-sports.undo.jp/index.html
専門医と理学療法士が協働して”リハビリで治療する”スポーツ障害の予防・治療を専門とする施設。年齢、性別、種目、ポジションなど複雑な要素を考慮しながら、専門医による診断と原因の検索、それに基づく理学療法士、トレーナーによるリハビリテーションを主体とした治療を行っています。
 
相澤病院のサイトはこちら
http://www.ai-hosp.or.jp

 
ライター:上田雅也
※この記事は、コンパス第6号(平成27年9月30日発刊)に掲載されたものです。

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