【相澤病院】世界に二つと、同じがんはない。

  1. 健康

相澤病院の「健康があいことば」
世界に二つと、同じがんはない。

副作用のイメージが先行した抗がん剤。今はどうなのでしょうか。抗がん剤を始めとした化学療法の進化によって、これからのがん治療はどう変化していくのでしょう。

相澤病院の「健康があいことば」vol.15

▼目次
1.今の抗がん剤治療は、昔とはまったく別物。
2.集学的治療の真価は、医療者の連携に左右される。
3.個別化の先にある、もっと人に寄り添う医療。

 
抗がん剤

1.今の抗がん剤治療は、昔とはまったく別物。

以前は外科医として手術の傍ら、抗がん剤治療に携わっていた中村医師。今は化学療法科の医師として治療にあたっている。抗がん剤治療を取り巻く環境に何か変化があったのだろうか。

-- 昔の抗がん剤治療は大変だったと聞きますが、本当ですか。
抗がん剤を含め、薬を使った治療を化学療法と呼びますが、昔の化学療法には抗がん剤治療くらいしかありませんでした。確かに30年ほど前は、激しい嘔吐が続いたりと、副作用がつらいわりにはあまり効かない治療という印象でした。
しかし、抗がん剤の種類が増え、副作用を抑える薬が開発されると、化学療法はがんに効く治療法として少しずつ認知されるようになりました。

-- 抗がん剤以外にはどのような治療法があるのですか。
がん細胞だけ狙って攻撃する「分子標的治療薬」や、人間が本来備えている防衛力(免疫)を復活させ、その免疫に本来の役割であるがん細胞を退治させる「免疫チェックポイント阻害剤」などがあります。免疫チェックポイント阻害剤はノーベル賞でも話題になりましたよね。
一つ一つの治療法には、さらにいくつもの薬があります。そして、このように細分化し、複雑化する化学療法には、やはり専門の医師が必要となってきました。そこで、私が化学療法科に転向したというわけです。
 

2.集学的治療の真価は、医療者の連携に左右される。

化学療法の進化もあって誕生した「集学的治療」。従来の3大療法とは何が異なるのか。

-- 3大療法と集学的治療について整理させてください。
がんがその場にしかなければ「手術」。がんがその場にあっても、手術でとれない場合は「放射線療法」。がんが全身に散っていれば「化学療法」。というのが基本的な考え方です。
そして「集学的治療」とは、このような手術・放射線療法・化学療法の中から2つ以上の治療を組み合わせて行う治療のことです。単一療法では治療が難しくても、集学的治療によって効果が期待できるケースもあります。
例えば、他臓器への転移がなく局所で進行している直腸がんの例です。手術で取り除きたいが大きすぎる場合、まず、化学療法と放射線療法で腫瘍を縮小します。それから手術で摘出し、その後、化学療法で再発予防を図ることがあります。驚くかもしれませんが、全身療法だけと思われがちな化学療法を手術の前後にやるんですね。

-- そうなると、誰が治療を主導していくのですか。
専門医たちです。正確に言えば「キャンサーボード」です。
キャンサーボードとは、外科・内科・化学療法科・放射線診断科・放射線治療科・病理診断科・緩和ケア科など、それぞれの分野のエキスパートが参集し、患者さんの症状や状態、療養環境等を踏まえて意見交換した上で、病院としてその患者さんにとって最適な治療方針を決める会談です。
このキャンサーボードは、全ての医療機関の「義務」ではありませんが、相澤病院では全ての患者さんに対し、がんの種別ごと毎週実施しています。私たちは集学的治療の成立には、各科の連携が欠かせないと認識しているからです。

-- つまるところ、患者ごとに治療がある、と。
そうですね。
相澤病院は患者さんに対し、画一的な<治療>を提供するのではなく、その方に最も適した、もっと広い意味での<医療>が大切だと考えています。
これを「個別化医療」と言い、これからのがん医療で最も重要となる概念です。また、私が外科医に拘らなかった理由の一つとして、最も大切にしている考え方です。
 

3.個別化の先にある、もっと人に寄り添う医療。

患者さん一人ひとりに対し、キャンサーボードによって個別の治療方針を出している相澤病院。がん医療は、個別化医療を経て、さらに進化を続けるという。

-- 治療法の確立には、どのような変遷があったのでしょうか。
がんが人類史上最初に登場するのは、紀元前2500年のこと。そこには「治療法はない」と記されています。
その後、長い年月を経て、がんの治療は確立してきました。部位や種類(がんの種別)によって治療法は変えるべきだということが判明し、さらに進行度(ステージ)によっても治療法を変えることが効果的だとわかってきたのです。
ですから、肺がんと大腸がんでは治療法が異なりますし、同じ大腸がんでも、がんのある場所や進行度が違えば、やはり治療法は異なります。

-- 最近は同じがんで同じ進行度でも、治療法が異なることがあると聞きます。
その通りです。
特に化学療法では、遺伝子の型により使用する薬剤が異なります。同じがんで同じ進行度でも、がんの遺伝子によって抗がん剤が最適な患者さんもいれば、免疫チェックポイント阻害剤がベストな患者さんもいます。あるいは、同じ分子標的治療薬でも、人によって薬が異なる場合があります。
がん医療は新しい薬や技術を使えばいいというわけではありません。やはり個別化が大切です。言い換えれば、「一人ひとりに合わせたオーダーメイドな医療を」ということになります。

-- 個別化が進んだ先のがん医療はどうなるのでしょうか。
「どう治すか」から「どう生きるか」に変わります。人それぞれ生き方や価値観は違いますから、がん医療にはどうしても個別化が必要です。
「もっと、人と人生に寄り添う医療」。
その実現に向けて、相澤病院のがん医療チームは、日々努力しています。

 
- 取材協力 -
相澤病院
がん集学治療センター
化学療法科 統括医長
中村 将人
http://www.ai-hosp.or.jp/shinryo/a_center_1.html

相澤病院のサイトはこちら
http://www.ai-hosp.or.jp

ライター:上田雅也
※この記事は、コンパス第21号(令和元年6月29日発刊)に掲載されたものです。

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