【弁護士が解説】教育資金 一括贈与を利用した節税対策(続)
節税対策の一つ「教育資金一括贈与制度」。非課税で大きな金額が相続できるとあって、非常に注目されています。しかし、その教育資金一括贈与制度にもメリット・デメリットがあります。山本弁護士に解説をお願いしてきました。
1.はじめに
2.教育資金とは
3.本制度の活用方法
1.はじめに
将来世代への資金移転を目的として、平成25年に創設された教育資金一括贈与制度ですが、平成31年3月31日に適用期限を迎えます。しかし、制度の利用件数が増え続けていることから、文科省が制度の恒久化を検討していることがわかりました。仮に、制度の恒久化が実現した場合は、将来的な相続対策としても組み込みやすくなることから、さらなる利用の拡大が見込まれると思われます。
教育資金一括贈与は、使途を「教育資金」に限定しており、どの範囲の支払いが「教育資金」に含まれるか不明確な部分もあることから、今回は、教育資金一括贈与の使途について解説をしたいと思います。
2.教育資金とは
教育資金とは、
①学校等に対して直接支払われる金銭及び②学校等以外に対して直接支払われる金銭のうち教育を受けるために支払われるものとして社会通念上相当と認められるものをいいます。
①の具体例としては、入学金、授業料、入園料、保育料、施設設備費、修学旅行費、PTA会費、学級・生徒会費などがあげられます。また、②の具体例としては、学習塾・家庭教師の月謝、野球チームでの物品購入、ピアノの個人指導費用、教科書費・教材費(リコーダー、裁縫セット等)、制服・通学かばん等の学校指定の学用品費、卒業アルバム代、給食費、通学定期券代、留学渡航費などがあげられます。なお、本制度の非課税枠の総額は、1,500万円ですが、教育資金の支払先によって、非課税となる上限がことなるため注意が必要です。1,500万円の非課税枠の中で①については、1,500万円まで、②については500万円までが非課税となります。
このようにみると、学校生活等に必要となる大部分の費用については、教育資金の対象となることがわかります。
3.本制度の活用方法
この制度を利用した場合、一括贈与額(上限1,500万円)は30歳までに使い切る必要があります。また、この制度を利用しなかったとしても、その都度使う分だけの教育資金の贈与は、もともと非課税です。
これらのことを考慮すると、まだ年少の子どもや孫への贈与は、教育資金の一括贈与制度を利用して大きなメリットを受けることができます。しかし、ある程度年齢が高く、例えば、大学生くらいの子どもや孫への贈与は、教育資金の一括贈与制度ではなく、通常の「その都度」必要な分だけの贈与を活用する方が、使い残しのリスクを避けることにつながります。贈与を受ける方の年齢によって、「一括贈与」と「その都度贈与」を使い分けていくといいでしょう。
― 取材協力 ―
山本法律事務所
長野県松本市島立798-1 YSビル102
弁護士 山本 賢一 氏
http://www.yamamoto-lo.jp/