【弁護士が解説】こんな遺言書は、無効になる恐れあり
遺言書にはルールがあり、そのルールを守らないと無効になる恐れがあります。また、ルールに則っていても、様々な要素によっても無効になります。遺言書について、山本法律事務所の山本弁護士にQ&A形式で解説していただきました。
Q:父(82歳)と同居してその世話をしている長男の私に、父は全財産を相続させたいと言っています。が、多少認知症の疑いがあります。この場合、父に遺言書を書いてもらっても、この遺言書は有効でしょうか。
〈ポイント1〉この場合、お父様に遺言能力(意思能力)があるか否かが問題です。遺言能力で一番の問題点は、高齢者の方で認知症が進行し、遺言時に意思能力が存在したかどうかです。
〈ポイント2〉自筆証書遺言の場合は、自ら遺言内容を自書することを要するので、裁判例でも、一般にその内容が合理的で理解可能なものであれば有効とされる傾向にあるようです。なお、自筆証書遺言の場合、意思能力の判断資料として、付言事項で遺言における財産の分配方法について理由などを書くことをお勧めします。
〈ポイント3〉公正証書遺言の場合は、遺言者は公証人に口授するだけで自らは自書しません。そのため、遺言者の死後、遺言当時に意思能力が存在したかどうかについて裁判で争われるケースが散見されます。そこで、認知症が疑われるケースでは、公証人は必ず事前に遺言者と面会し、意思能力の有無を確認したり、担当医師の意見を聞いたり、診断書の提出を求めたりして、意思能力の有無を判断しています。
- Answer
まずは医師の診察を受け、遺言能力の有無の判断を仰いだ上で、お父様に遺言書を書いていただくことをお勧めします。なお、この場合、できるだけ「公正証書遺言」をお勧めしますが、「自筆証書遺言」のときは、上記のとおり付言事項で遺言における財産の分配方法についての理由などを書くと良いでしょう。
Q:父がなくなったので銀行預金の名義書換の手続きをしたいのですが、どうすればよいですか。
- Answer
銀行等の金融機関では、通常「相続手続依頼書」が用意されていますので、これに相続人全員が署名押印(実印で印鑑証明書付き)する必要があります。そのほか、被相続人や相続人の戸籍謄本、除籍謄本等も必要となります。被相続人の預金は、名義書換の方法ではなく、解約払戻し後に相続人の預金口座に振込するか、現金で受け取ることになるようです。
― 取材協力 ―
山本法律事務所
弁護士 山本 賢一 氏
http://www.yamamoto-lo.jp/