【弁護士が解説】卒婚のメリット・デメリット
子供が独立したり、定年を迎えたりすると、「夫婦の在り方」について改めて考え始める方が多いようです。一度距離をおき、今後の生き方を見直すきっかけとして、「卒婚」を選択する。そんな夫婦も全国的に増えているそうです。
しかし、卒婚には「同居スタイル」と「別居スタイル」があり、別居スタイルをとる場合はコミュニケーション不足から離婚したとみなされることもあります。理想的な卒婚とは。山本法律事務所の山本弁護士にお話を伺ってきました。
▼目次
1.「卒婚」で注意すべき点
2.自分の時間だけではなく、夫婦で過ごす時間も大切
1.「卒婚」で注意すべき点
卒婚には、一緒に暮らしながら卒婚生活を送る同居スタイルと、離れて暮らしながら良好な夫婦関係を維持する別居スタイルがあります。どちらのスタイルであっても卒婚を成功させるためには、夫婦の信頼関係とルール作りが必要となってきます。特に、別居スタイルでの卒婚を考えている方は注意が必要です。例えば、別居スタイルの卒婚を選択し、長期間別居を続けていたところ夫に恋人ができて、「離婚してくれ」と言われたとします。妻が、「離婚はしたくない」と言ったとしても、長期間別居を続けていると、婚姻関係が破綻しているとして、裁判で離婚が認められてしまう危険性があります。また、財産分与についても、別居後に築いた財産は夫婦の共有財産ではないと考えられる可能性もあるので、離婚が認められた場合の不利益は非常に大きくなってしまいます。もっとも、別居スタイルの卒婚のすべてで離婚が認められてしまうというわけではありません。例えば、単身赴任も別居状態ですが、単身赴任の状態が長期化したとしても、別居していること自体が婚姻関係の破綻と評価されることはありません。
2.自分の時間だけではなく、夫婦で過ごす時間も大切
別居スタイルの卒婚を成功させる秘訣は、夫婦が別居スタイルの卒婚を選択することになった経緯を残しておくことです。夫婦の間で、別居スタイルの卒婚を選択した理由を文書に残したり、メールでの話し合いを保存したり、周囲の方々に別居の趣旨を話したりするのも一つの方法です。また、別居の経緯を残しておいたとしても、別居後、夫婦間において全くコミュニケーションがないと、婚姻関係が破綻していたと評価されやすくなります。距離的に離れることによって、夫婦の気持ちも離れやすくなりますから、別居スタイルの卒婚でも、定期的に食事をするなどして、夫婦間のコミュニケーションを絶やさないことが大切になります。
卒婚は終活の一つとしてもとらえることができますし、夫婦の今後の生き方を見直すきっかけにもなります。これを機会に、今後の夫婦の生活スタイルについて考えてみてはいかがでしょうか。
― 取材協力 ―
山本法律事務所
弁護士 山本 賢一 氏
http://www.yamamoto-lo.jp/