心の 下流老人

  1. 相続

心の 下流老人

 
生活にも影響を与えてしまう心の下流化。孤立することが一番の原因と考えられますが、どのような対処法があるのか気になりますよね。そこで、蔵エンタープライスの板倉さんにお話を伺ってきました。
 
下流老人


私のように、葬儀や相続、遺骨に関する相談に毎日乗っていると、外観からは全く想像もつかないプライベートを垣間みることがあります。自宅は豪邸。服装も上品。しかし、そんな方が「数年前に他界した家族の納骨ができない」と言うのです。理由は「お金がない」。いわゆる「下流老人」です。下流老人とは、生活保護基準相当で暮らす高齢者、あるいはその恐れがある高齢者です。どちらかと言えば裕福な人が陥りやすいと言われていて、その状況はこの長野県でも同じです。実際私が相談に乗った方々は、確実に「中流家庭以上」の人でした。そして、家族の病気などがきっかけとなって充分だった貯蓄が底をつき、負債を抱えた生活を送るようになりました。しかし、下流老人の原因は金銭面での貧困だけでなく、心の貧困化も原因だと思います。自分のことしか考えられない人。幸せの価値観が物質的豊かさのみの人。見栄を張りがちな人。頼れる人間がいない人。究極的にはこんな人もいました。所有する不動産を売れば普通に暮らしていけたでしょうに、「もっと高い価格でないと到底手放すことはできません!」と言って承諾しないでいるうちに、とうとう私が立て替えなければ電気も止められるほど貧困に陥った方です。しかし、その方はもうお亡くなりになっています。何ともやりきれない悔しい話ですが、ようやく買い手が見つかって訪問した時、すでに自宅内で自殺していたのです。
 
人生に必要なのは「みえ」ではありません。「えみ」です。家族や親戚、友人や地域と、「笑み」で繋がることが最も大切なのです。そして、そうした繋がりや絆はセーフティネットとして機能し、人の孤立を防ぎます。
 
人生の下流化は心の下流化に始まり、孤立で決定的となります。だからといって、心が豊かなら下流老人にはならない、と言っている訳ではありません。お金は大切です。節約も大事でしょう。ただ、これだけは言い切れます。笑みを生む会話は大切にしてください。家族や地域との会話を失い、誰にも相談できなくなった人の多くは「心の下流老人」に陥りがちです。こんな時代です。今こそ、家族を、隣近所を、昔のように大切にすべきと私は強く思うのです。

 
― 取材協力 ―
蔵エンタープライズ
代表 板倉 富男 氏

 
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前話 孤独死と社会構造
次話 故人のために、葬儀を二回「死後事務委任契約」だからできること

 
① 相続とは承継也
② エンディングノートの在り方
③ 葬儀に関する思いやり
④ 後見人制度で想いを繋げる
⑤ ペットロスを感じるけど、旦那ロスを感じない。どうして?
⑥ 同じお墓に入れない?そんな親子・親族が急増中

 

 
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