働く喜び
働く喜びを実感したい。と、今「定年後に働く」ことへの関心は高まりつつあります。そこで今回は、実際に定年後に新しい職を得て働く北澤すみ子さんに、働く喜びを綴ってもらいました。
私は現在、松本医療福祉専門学校のお掃除おばさん歴八年の高齢者です。定年を迎えるまでは、介護職員として介護施設に勤めていました。
今の職場も気に入っています。ここでは、教室から漏れ聞こえてくる先生の声や、学生さん達の答える声、時には笑い声や賑やかな声が、廊下やホールいっぱいに溢れています。そんな若いパワー溢れる雰囲気に、私はいつも元気をもらいながら働いています。
働く喜びは数え切れません。
ある男子学生さんは、いつ顔を合わせても小さな声でボソッと「おはようございます…」と下向き加減だったのに、ある日突然しっかりと私の目を見て「いつも綺麗に掃除して頂きありがとございます」と、きちんと挨拶してくれました。
こんな女子学生さんもいました。
「手が荒れて痛いでしょう。これ使って下さい!」
そして、綺麗にラッピングしたハンドクリームをプレゼントしてくたのです。またある時は、寒くて震えながら掃除をしている私に「風邪ひかないでね!」と、貼るカイロをそっとポケットに入れてくれた学生さんもいました。
そんな時は本当に嬉しくて感動して、日頃の苦労なんて一気に吹き飛びます。学生さん達が少しでも気持ち良く清々しい環境の中で勉学に励んでもらえるよう、どんな小さな汚れでも見落とさず、細かい箇所まで気をつけて掃除をする。毎日がその繰り返しです。でも、学生さん達はいつも私の仕事をきちんと見ていてくれるのです。
私も高齢者と呼ばれる年齢になりましたが、毎日元気に生き甲斐を感じて暮らしています。働ける場所があることは本当に幸せです。こうした機会を与えてくださって本当に感謝しています。そして、四月から入学してくる学生さん達との新しい出逢いを楽しみに、これからも頑張りたいと思います。
- 取材協力 -
北澤 すみ子 氏