天皇 即位 の今と昔を比較しよう

  1. 今・昔

日本が好きなら、絶対に知っておきたい「天皇即位」の今昔

日本は世界で最も歴史のある国ですから、天皇の御代替わりにも様々な伝統的儀式があります。しかし、今と昔ではその内容や言葉にもいくつか違いが現れ始めています。消えつつある概念「践祚(せんそ)」。新しく生まれた言葉「上皇后」。今回は、日本が好きなら絶対に押さえておきたい「即位」について、今と昔で比較しました。

▼目次
1.世界一続いている王室
2.践祚(せんそ)と即位
3.消えゆく言葉①
4.消えゆく言葉②
5.200年ぶりの上皇誕生
6.上皇と天皇どちらが上位?
7.新しい年号をどう迎えるか

即位

1.世界一続いている王室

イギリス王室は世界で三番目に歴史のある王室です。二番目はデンマーク王室です。では、世界最長の歴史を誇る王室はどの国にあるでしょう。
答えは日本です。宮内庁によれば、日本の皇室は初代の神武天皇に始まり、平成31年5月1日には第126代天皇が即位します。この歴史は世界最長を誇り、日本の皇室である天皇家は世界最古の王室として世界に知れ渡っています。

2.践祚(せんそ)と即位

最近の報道では退位と即位をワンセットのように表現していますが、厳密には違います。退位と即位の間には「皇位を継承する」という手順があります。正しくは「退位→皇位継承→即位」です。
そして、昭和天皇の時代までは、こうした手順にはそれぞれ名前がありました。皇位継承することを「践祚」、皇位継承したことを国の内外に示すことを「即位」と、それぞれ呼び分けていました。

3.消えゆく言葉①

践祚という言葉は、今の法律からは消えています。しかし、その概念は残っています。今上天皇(きんじょうてんのう。現在、在位している天皇陛下を表す言葉)は、昭和天皇が崩御した昭和64年1月7日に「即位」し、平成2年11月12日に「即位の礼」を行なっています。この、1月7日の「即位」が践祚、11月12日の「即位の礼」が即位にあたります。
ちなみに、今回の御代替りでは、践祚から即位まではほとんど時間はありませんが、過去には即位までにとても時間を要した天皇もいます。後奈良天皇の即位は践祚の10年後、その父である後柏原天皇に至っては、即位は践祚から22年後でした。

4.消えゆく言葉②

「皇太后(こうたいごう)」という言葉も消えてしまいます。
皇太后は、平安時代からあった言葉です。先代の天皇の奥様を意味します。ちなみに、明治時代の法律でも「皇太后」という言葉はありました。
しかし、安倍内閣はこの度、皇太后という言葉を廃し、新しい言葉を作りました。それが「上皇后」です。つまり、この「上皇后」という言葉は、平成にできた新しい言葉なのです。

5.200年ぶりの上皇誕生

上皇后は史上初の誕生ですが、上皇は 年ぶりの誕生です。ただ、日本の歴史において、上皇は稀な存在ではありません。歴代の半分近く、およそ 名の天皇が上皇になっています。そして、意外に聞こえるかもしれませんが、上皇の全員が実権を握り、院政を行なったわけではありません。

6.上皇と天皇どちらが上位?

一般的には、上皇は太上天皇(だじょうてんのう)の略号です。太上とは「最高の」という意味です。そして、天皇は譲位により、もともとは自動的に太上天皇を称するのが慣例でした。
しかし、平安時代初頭のことです。嵯峨天皇という天皇が譲位の際、「太上天皇」の尊号を辞退します。天皇より権力を持つべきではないと判断したためです。
それで困ったのは、嵯峨天皇の次の天皇でした。先代の天皇の身分が定まらないからです。そこで新天皇は「先代の天皇を上皇としますよ」と宣下(せんげ。命じること)をし、嵯峨天皇はそれを受け入れます。これにより、天皇は上皇より上位である、という関係性が初めて明確にされました。
そして、この「上皇」こそが、今上天皇が譲位された後の正式な称号です。践祚や皇太后という言葉はなくなる一方で、上皇という言葉は今後も使用され続けます。

7.新しい年号をどう迎えるか

消えるものもあれば、新たに生まれるものもあります。「年」はまさにそうでしょう。古い年は往き、新しい年が来ます。そして、その節目にあたる年末年始には、私たちは災厄を切り落とすために切れやすい蕎麦を食べ、年が明けたら初詣に出かけ、新しい年の無事と平安を祈願します。
元号が変わるとは、旧年号が明けるということです。つまり4月30日から5月1日は、言わば年末年始みたいなものです。
というわけで、いかがでしょう。改元の時は、年末年始さながら蕎麦を食べ、お参りに行きませんか。きっと良い年が始まるはずです。
ではみなさま、よいお年号をお迎えください。また元気にお目にかかります。
最後に、平成最後の「いまむかし」のコラムを書くにあたり、皇室に関して多くをご教示くださった株式会社クリーンサービス代表の上條さまに、心より御礼申し上げます。

本、出しました。

当サイトで最も高い閲覧数を誇る「今昔」。
それをさらに掘り下げ、書き下ろしました。

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