【相澤病院】50歳から急増「 肺がん 」

  1. 健康

相澤病院の「健康があいことば」
50歳から急増「 肺がん 」

がんの中で最も死亡率が高い「肺がん」は、煙草を吸わなくても50歳を過ぎると急増すると言われています。肺がんと年齢や性別、喫煙との関係、さらには治療法について、相澤病院がん集学治療センター長の三島医師に伺ってきました。

相澤病院の「健康があいことば」vol.11

▼目次
1.死亡率ワースト1「肺がん」
2.煙草を吸わないのに肺がん?
3.肺がんは50歳から急増する
4.肺がん検診は胸部CT検査を選ぶ
5.早期発見で呼吸への負担を小さく
6.手術以外の肺がん治療7.治療の選び方
8.予防法のない肺がんを予防する
9.相澤病院の提案は生活に合わせた治療法

肺がん

相澤病院 がん集学治療センター長 呼吸器外科 統括医長
三島 修

1.死亡率ワースト1「肺がん」

肺がんは、気管や気管支、肺胞の細胞などが、何らかの原因でがん化したものです。日本人が生涯のうちに罹患する確率は、男性が10人に1人、女性が21人に1人で、男性は女性の2倍のリスクが確認されています。さらに、肺がんは死亡率が高く、男性ではがんの中でワースト1、女性でも大腸がんに次ぎます。そして、男女合計では死亡率は最も高く、肺がんは罹患率だけでなく、死亡率も高いがんです。

 

2.煙草を吸わないのに肺がん?

喫煙による肺がんのリスクは、男性で4.4倍、女性で2.8倍も高まります。また、喫煙期間が長いほど肺がんのリスクは高まり、喫煙開始が早いほど肺がんのリスクは上昇します。そのため、私たちは強く禁煙を勧めています。しかし、喫煙が肺がんと非常に大きく関係しているのは「扁平上皮がん」のみで、肺がんのほとんどは、煙草を吸わなくても罹患します。実際、リスクが低いと思われていた非喫煙者、それも女性が、近年では「腺がん」という種類の肺がんにかかるケースが増加しています。
 
肺がんの分類

 

3.肺がんは50歳から急増する

肺がんのリスク因子は喫煙以外にも、慢性閉塞性肺疾患(肺気腫、慢性気管支炎)、アスベスト、PM2.5といった大気汚染、そして肺結核などがあります。そして「年齢」も肺がんのリスク因子です。肺がんは、 歳を超えると急激に罹患率が高まり、年齢を重ねるごとにその数値は高くなります。

 

4.肺がん検診は胸部CT検査を選ぶ

肺がんの主な症状は、せき、たん、血たん、発熱、呼吸困難、胸痛などの呼吸器症状です。しかし、それらは病状の進行とともに現れることが多く、ほとんどの場合、早期では無症状というのが現実です。また、胸部レントゲン検査では他の臓器や陰影と重なることもあって、早期発見にはつながりづらい傾向にあります。図2をご覧ください。レントゲンでは写っていない「がん」がCTでは見えます。ですから、肺がんの早期発見には胸部CT検査を推奨しています。胸部CT検査は、5~10㎜の間隔で輪切りにして、その切断面を観察する検査です。レントゲン検査よりも画像の精度が非常に高く、小さな病変でも見つけることが可能です。早期に発見するためにも、喫煙者は毎年、非喫煙者でも2年に1回の胸部CT検査がお勧めです。
 
検査の違い

 

5.早期発見で呼吸への負担を小さく

死亡率の高い肺がんですが、比較的早期といわれるステージ で発見できれば、胸腔鏡による手術が可能です。相澤病院の胸腔鏡下手術は胸に小さな傷(2㎝くらい)を3ヶ所開けて、そこから器具を挿入して行う手術です。開胸手術に比べて、身体への負担が少ないため、入院期間は5日から7日程度ですみます。さらにがんの状況によっては、より小さな切除ですむ「区域切除術」も検討できます。標準手術は葉切除(肺を構成する葉の一つを切り取る)で肺全体の10~25%の切除となりますが、区域切除では、根治性を保ちながら、切除部を縮小することができます。

 

6.手術以外の肺がん治療

がんの治療には、手術以外にも放射線療法や化学療法、緩和医療などがあります。放射線療法は、がんに放射線を照射する治療です。相澤病院では、腫瘍へ集中的に照射できる「トモセラピー」、さらに周囲のダメージをより少なくし、腫瘍に高線量を当てることが可能な「陽子線治療」など、従来よりも副作用の少ない治療も選択可能な環境を整備しています。化学療法は、抗がん剤に代表される薬による治療です。近年では遺伝子学的治療や免疫学的治療がめまぐるしい進歩を遂げており、副作用が少なく、高い治療効果が期待できるケースもあります。そして、緩和医療も重要ながん治療の柱です。相澤病院では、病変の発見時から痛みがあればすぐ、その緩和のために取り組んでいます。

 

7.治療の選び方

肺がんの治療では、肺がんの組織型や進行度、呼吸機能を含めた全身状態を勘案して、治療法が選択されます。組織型と進行度から、非小細胞肺がんでは0期からⅢA期までが、小細胞肺がんではⅠ期のみが手術適応となります。ⅠA期腺がんの手術成績は、5年生存率が約90%と良好ですが、肺機能が低下し手術後低肺機能が懸念される場合には、放射線治療を選択することもあります。一般に放射線治療の生存率は、手術療法より約10%程度低下すると考えられています。全身状態による治療方法の選択は、その治癒率と術後の生活との兼ね合いで決定していくこととなります。術後呼吸不全による生活の低下(常時酸素投与が必要となるなど)は、生活の質を低下させてしまうため、重要な要素となります。このようにがんの治療は、がんを治すことだけでなく、これからの暮らしに最適なことは何かといった「生活を基盤とした治療」を重要視して判断されています。

 

8.予防法のない肺がんを予防する

肺がんの予防法は、今のところ「ない」と言っても過言ではありません。禁煙は重要な一次予防ですが、最近では非喫煙者も肺がんに罹患する人が増えています。ですから、肺がんに対しては一次予防に加えて、二次予防といわれる『早期発見・早期治療』が重要です。定期的な胸部CT検査などによる早期発見が大切となります。

 

9.相澤病院の提案は生活に合わせた治療法

治療の根幹となるのは、「患者さんの暮らしに最適な治療」です。肺がんと診断された場合、手術か放射線療法か、あるいは化学療法を組み合わせるべきか。相澤病院では、多様な専門分野の医師によって、治療方針を様々な角度から検討し、患者さんに治療法を提案しています。また、がん集学治療センターでは、翌日に治療となる全ての患者さんの病状などをがん治療専門のスタッフで協議し、よりよい治療やケアとなるよう努めています。と同時に、大切な取り組みが「早期発見」ですから、肺がんについて知っていただき、検診の重要性を認識していただけるよう、講演会などの啓発活動も積極的に行っています。非喫煙者も肺がんになる時代です。煙草を吸わないからと慢心せずに、50歳を過ぎたら2年に一度は肺がん検診を受けていただきたいと思います。

 
■相澤病院 がん集学治療センターとは■
http://www.ai-hosp.or.jp/shinryo/a_center_1.html
 

患者さんのために何ができるのか。相澤病院では、患者さんの想いを大切に、一人ひとりに合ったがん治療とケアを目指しています。各診療科の医師や看護師、薬剤師、相談員など、がん診療にかかわるスタッフ全員がチームとなり、病院の総合力で、がんと闘うあなたを支えます。
 
相澤病院のサイトはこちら
http://www.ai-hosp.or.jp
 
ライター:上田雅也
※この記事は、コンパス第16号(平成30年3月30日発刊)に掲載されたものです。

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