日本人に多い大腸がん

日本人に多い大腸がん

~ 健康があいことばvol.13 ~
 
日本人において発生率が増加傾向にある「大腸がん」。患者数が多いだけに多くの病院で手術が行われていますが、成績の施設間格差が大きいのが現状です。そこで今回は、大腸がんの治療や病院の選び方について、外科医の吉福医師にお話を伺ってきました。
 
日本人に多い大腸がん

相澤病院 外科センター 医長
吉福 清二郎

◇ 日本人にとって大敵
  大腸がん

- 大腸がんにかかる日本人が増えていると聞きました

日本人に一番多いがんといえば胃がんでしたが、近年では食の欧米化により大腸がんが増加しています。その傾向はますます強まっていて、昨年の国立がん研究センターがん統計予測によれば、大腸がんは全がんの中でも、男女計で死亡数が2位、罹患数は1位です。
 
- 私たちがきをつけるべきことはなんでしょう

高脂肪・高カロリーな食事を控えるなど、食の見直しは予防策の一つです。また、年齢および肥満と運動不足も危険因子です。食生活とともに日常生活を見直すことも大切でしょう。一方で、大腸がんは早期治療により完治できる病気です。便潜血検査は体への負担も少なく、毎年繰り返すことで、検査感度が上がり発見率も高まる検査です。年に一度は必ず便潜血検査を受診しましょう。
 

◇ 大腸がんは治るのか

- 大腸がんの治療法にはどのようなものがあるのでしょう

大腸がんの主な治療法は、内視鏡治療・手術療法・化学療法・放射線療法の4つです。内視鏡治療は完治を目的にステージ0のがんに限り採用する方法で、内視鏡を使って大腸の内側からがんを切除します。化学療法は抗がん剤治療に代表される治療法で、放射線療法とともにがんの進行を遅らせる目的もあります。
がん治療の選択肢は、他にもあります。そのひとつ「術前治療」は、化学療法や放射線療法によりがんを小さくしてから、手術でがんを取り除く方法です。例えば、肛門の近くにできた直腸がんの場合、手術でがんを取り除いた後に人工肛門をつけるのが一般的ですが、術前治療によりがんが小さくなれば、肛門温存の手術も可能となるわけです。
 
- 治療方針は誰が決めるのですか

相澤病院では、治療方針を医師一人が決めるのではなく、キャンサーボードを経て病院として最良と考える治療法を患者さんに提案します。キャンサーボードとは、外科・内科・化学療法科・放射線診断科・放射線治療科・病理診断科・緩和ケア科などの専門医が参集し、患者さんの症状や状態、療養環境等を踏まえて意見交換した上で、病院としての治療方針を決める会議です。
 
- 相澤病院で最も多い治療法を教えてください

相澤病院における大腸がんの治療は、一年でおよそ150例です。そして、その中のおよそ8割以上が「腹腔鏡手術」です。腹腔鏡手術とは、お腹に小さな穴を数ヶ所開け、腹腔鏡と呼ばれる内視鏡カメラや手術操作器具を挿入してがんを切除する手術です。従来の開腹術と比べて傷が小さく済むので美容性が高く、早期社会復帰が可能です。外科医の視点から考えると、腹腔鏡を用いれば微細血管や神経の把握が容易になり、出血量の減少および神経温存が可能です。高性能なカメラで撮影された写真や動画が、肉眼で見るより鮮明に感じることがありますが、それと同じです。直腸がんの手術の場合、骨盤という不快ところでの操作が必要なのですが、開腹術では良好な視野の確保が困難です。しかし、腹腔鏡を用いれば視野が確保できるので、手術操作がしやすくなり、安全性が保たれます。(図1参照)
 
直腸がんの手術イメージ

- 腹腔鏡手術にデメリットはないのでしょうか

がんが大きくなっていたり周りに広がったりしていると、腹腔鏡手術は困難です。過度な肥満、あるいは心肺機能の異常、これまでの手術によりお腹の癒着が認められる方にも適していません。また、腹腔鏡手術は高度な技術と手術チームの習熟度を要するため、全ての医療機関で行えるわけではありません。さらに、導入している医療器具により手術環境も大きく変わります。例えば、腹腔鏡手術はモニターを見て行うため、遠近感の把握が困難です。そこを補うために3Dカメラを搭載した腹腔鏡が登場しました。相澤病院でも腹腔鏡に3Dカメラを採用しており、非常に手術がしやすいと感じます。
 
- 腹腔鏡手術が対象となるステージを教えてください

以前の腹腔鏡手術はステージ0、1のみが対象でしたが、現在は一切規定されていません。「腹腔鏡手術の適応は、がんの部位や進行度などの腫瘍側要因および肥満、開腹歴などの患者側要因だけでなく、術者の経験、技量を考慮して決定する」とガイドラインには書かれています。つまり、腹腔鏡手術の適応は各病院の判断に委ねられているのです。
 
- 腹腔鏡手術を行う術者の技量は、知ることができますか

日本内視鏡外科学会は、腹腔鏡手術をより安全に行うために技術認定制度を実施しています。筆記試験はもちろん、実際に行った手術のビデオを提出し、技術レベルも審査されます。そのため、少なくとも認定者については、腹腔鏡手術を安全かつ適切に施行する技術が担保されているといえます。
 

◇ 大腸がんの治療に最適な病院とは

- どんな病院が、大腸がんの治療に適しているとお考えですか

一つの目安として、厚生労働省が全国に指定する「がん診療連携拠点病院」があります。長野県では相澤病院を含め8つの医療機関が指定されています。もう一つ、大腸がんについては、年間100例以上の治療実績がある、治療に慣れた病院を推奨します。腹腔鏡手術であれば、先ほどの技術認定制度で認定を受けた医師がいる病院であれば、一定の技術レベルが担保されているため安心でしょう。
 
- 吉福先生が目指す、大腸がんの治療についてお聞かせください

患者さんにとって手術は一回きり。ですから、術前治療など、もっと治療の選択肢を増やしていきたいと思います。その選択肢を用いて患者さん一人ひとりに応じた「オーダーメイド治療」をする。それが私たち相澤病院の目指すがん治療です。個人的には、人工肛門の選択肢しか与えられないような症例であっても、「相澤病院なら肛門を残すことは可能ですよ」と言えるほど、外科医としての技術を高めていきたいと思います。
縫合は手術支援ロボット・ダヴィンチでないと困難というケースもありますが、症例や練習を積み重ねることで、人の手で行う腹腔鏡手術でも遜色なく手術できます。そのために相澤病院の外科医は、鍛錬を怠りません。
 

 
相澤病院のサイトはこちら
http://www.ai-hosp.or.jp
 
ライター:上田雅也
※この記事は、コンパス第18号(平成30年9月30日発刊)に掲載されたものです。

 
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