読書の秋 ~ そうだ、本を読もう。~

【2018年秋号 巻頭特集】 読書の秋

~ そうだ、本を読もう。 ~
 
燈下稍可親(灯火親しむべし)
これは唐の文人・韓愈(かんゆ)が息子に宛てた漢詩の一節です。
詩の大意は「秋の長雨がすっきりと上がったから、初秋の涼しさの中、灯火の下で読書ができる」というものです。
夏目漱石の小説『三四郎』で引用され、これがきっけとなって、日本では「読書の秋」が広がりを見せたそうです。
今は火を灯して明かりをとることはありませんが、秋の涼しさは昔と変わりません。
さあ、この秋は本を読み、心に豊作を願いましょう。
 
読書の秋

◇ 『日本史の論点-邪馬台国から象徴天皇制まで』/ 中公新書編集部
  『聖職の碑』/ 新田次郎

年間の新刊発行点数8万点以上、流通点数は80万点という膨大な本の中から、どれだけの良い本に巡り会うことが出来るでしょうか。そもそも、人は一生の間に何冊の本を読み、人生に影響を与え得る本に何冊出会えるのでしょうか。たとえ1冊でも、出会いのある書店になれるよう日々努めております。今回は2点、今、おすすめの本をご紹介させていただきます。
 
◇ 『日本史の論点-邪馬台国から象徴天皇制まで』

中公新書2,500点目の記念作品として、今年8月に発売されました。中公新書は今から56年前の1962年に創刊された新書レーベルで、岩波新書に次ぐ歴史を持ち、過去に様々な名著・ベストセラーを生み出してきました。そして、ここ、一、二年は『応仁の乱』『日本史の内幕』『日本軍兵士』『観応の擾乱』など、日本史に関するヒット作を連発しています。第一線の研究者による著書だけあって、歴史ファンに高い評価を受ける一方で、研究者の関心と歴史ファンの関心には違いがあり、また、研究者の常識が一般読者には全くしられていないということも珍しくない、と編集長の田中正敏さんは仰っています。この『日本史の論点』は、そうした著者と読者の溝を埋めるべく、5人の編集者と5人の著者が、がっぷり四つに組んで話し合いながら作られました。「邪馬台国はどこにあったのか」「大王はどこまでたどれるか」「大化の改新はあったのか、なかったのか」「元寇勝利の理由は神風なのか」「南朝はなぜすぐに滅びなかったか」「戦国時代の戦争はどのようだったか」など、古代から現代まで、いま日本史で注目の29の論点について、わかりやすく書かれています。歴史好きの方は、読まずにはいられない一冊ではないでしょうか。
 
◇ 『聖職の碑』

今から42年前に出版された本ですが、昨今、信州伝統の「学校登山」を中止する学校が増えつつあるとのニュースを耳にし、改めてその原点を見直す必要を感じました。私も中学生以来、久しぶりに読んでみました。
大正2年、暴風によって11名が犠牲となった駒ヶ岳での学校登山遭難事故を題材として、信州が生んだ巨匠・新田次郎先生が描いた山岳小説です。新田先生も幼い頃から、大勢の児童が亡くなったこの遭難をご存知で、いつかは調べてみたい題材とされていました。新田先生の関心のありようは、資料集め、生存者含む関係者への聞き取り、現地調査の徹底ぶりにもあらわれ、記録文学としても圧巻の内容になっています。なぜ、この悲劇の遭難事故は起きてしまったのか、そして、山の稜線上に立つ碑は、なぜ「慰霊碑」ではなく「遭難記念碑」なのか。当時の時代背景や教育界の状況にも触れながら、この遭難事故に立ち向かった人達の生き様を浮き彫りにした人間ドラマの傑作。信州人なら一度は読みたい名著です。

 
株式会社 平安堂
取締役 書籍事業部長
長崎 深志
http://www.heiando.co.jp/

あづみ野店:0263-72-8877
塩尻店:0263-54-3211
長野店:026-224-4545
若槻店:026-243-4545
東和田店:026-244-4545
川中島店:026-286-4545

 

◇ 『散り椿』/ 葉室麟(はむろりん)

小説が実写化された際、皆様は小説から読む「原作派」ですか。それとも映像から入る「映画派」ですか。私はどちらかと言えば「映画派」です。今回ご紹介させていただく『散り椿』も小説より映画が先でした。映画を先に見る醍醐味は、映画では描かれていないシーンが小説にはあって、私の場合はそれを発見した時に小さな喜びを覚えることです。『散り椿』もまさにそうでした。どちらを先に選ぶのか。それも楽しみ方の一つです。是非、小説も映画も両方をご堪能ください。
 
◇ 小説『散り椿』
  原作は直木賞作家・葉室麟

著者の葉室麟は、1951年に北九州市小倉に生まれ2005年『乾山晩秋』にて歴史文学賞を受賞してデビューし、2012年『蜩ノ記』で直木賞を受賞した日本を代表する歴史・時代小説作家です。この『散り椿』は2014年、角川文庫から発売されました。
時は江戸時代。かつて藩の不正を訴えるも認められず、故郷を追放された瓜生新兵衛。その妻・篠は病を患い、死の床で彼に最期の願いを託します。
「采女様を助けていただきたいのです」
采女は平山道場・四天王の一人で新兵衛の良き友でした。しかし、二人には新兵衛の追放に関わる大きな因縁がありました。そして、故郷へ戻った新兵衛は、藩内に隠された秘密を知り、やがてある確証を得て采女と対峙します。
新兵衛と篠との夫婦愛、新兵衛と甥・藤吾との間に生まれる疑似親子の絆、藤吾と美鈴の初々しい恋、平山道場の四天王と呼ばれた仲間との友情。侍としての凛とした命を懸けて闘うラブストーリーを主軸に、それぞれの感情が美しい日本語で紡がれ、人の想いが運命を変えてしまうことにハッとさせられる一冊です。展開も早く、誰にでも推薦できる時代小説です。
 
◇ 映画『散り椿』
  監督は木村大作

監督・撮影は、黒澤組の撮影助手としてキャリアをスタートし、2009年の初監督作『劔岳 点の記』で第33回日本アカデミー賞最優秀監督賞に輝いた木村大作です。キャメラマンとして数多くの映画賞を受賞した彼が、このたび映画人生60年目という節目に初の時代劇に挑みました。主演は岡田准一。他、西島秀俊、黒木華、池松壮亮、麻生久美子、富司純子、奥田瑛二ら、日本を代表する豪華俳優陣が集結しています。撮影は、全編ロケーション。そのため、映画『散り椿』では、観る者の心を揺さぶる力強い自然や美しい四季を背景に、誠実に生きようと葛藤する人々の姿がダイナミックに描かれています。また、圧巻の殺陣も必見です。
 
日本映画界に新たな歴史を刻む時代劇『散り椿』。9月28日より、松本シネマライツを始め全国の東宝系映画館で公開を迎えます。美しい映像で描かれた美しい時代劇を、ぜひ迫力ある映画館でご覧ください。

 
松本シネマライツ
副支配人
柳島 健
http://www.cinema-lights8.com/index.html

住所:長野県松本市高宮中116-2
電話:0263-24-0122(音声ガイダンス)

 

◇ 『ディズニー そうじの神様が教えてくれたこと』/ 鎌田 洋

「おそうじ」と聞くと、皆さんはどのような印象を持たれますか?最近では「開運」や「断捨離」というイメージを抱く方も増えていると聞きますが、今回私がご紹介するのは感動物語です。
 
◇ 夢の国の落し物

著者の鎌田洋氏は、元オリエンタルランドの社員です。初代ナイトカストーディアル(夜間の清掃部門)のトレーナー兼エリアスーパーバイザーとして活躍し、「そうじの神様」と呼ばれたチャック・ボヤージン氏から直接2年間にわたり指導を受けています。
この本は、そんな鎌田氏が自分の体験に基づいて書き下ろしたものです。舞台はディズニーの清掃部門。そこで働く4人のキャストたちによる4つの人間ドラマ「夢の国の落し物」「月夜のエンターティナー」「魔法のポケット」「夢の、その先」で構成されています。どれも大きく心揺さぶられる傑作ですが、4つの中で私が最も好きな物語は「夢の国の落し物」です。
結婚を間近に控える年頃の娘を持つ父は、ディズニーランドでナイトカストーディアルとして働いていました。しかし、父は娘にそのことが言えず、ずっと仕事について嘘をついていました。
「若いうちならまだしも、この年で清掃の仕事をしているというのは、ちょっと恥ずかしいと言うか……」
そして、父、母、娘、娘の彼氏がそれぞれの想いを抱きながら迎える大晦日の日に、ちょっとした事件が起きるのですが……。
ディズニーランドへ行ったことがある人も、まだ行ったことがない人も、涙なしでは読めない名作です。是非この物語で奇跡に巡り会ってください。
 
◇ この本が教えてくれたこと

『ディズニー そうじの神様が教えてくれたこと』は、まさにディズニーの魔法に満ちあふれた感動ストーリーです。しかし、この本は「ただ泣ける」だけの本ではありません。ディズニーのそうじの世界に秘められた「人を幸せにするヒント」が発見できます。
「そうじとは?」「サービスとは?」「人生とは?」
この本は、人間を成長させてくれる教科書的な側面も持ち合わせています。私はこの本を読んで、改めて「そうじはおもてなし」だと思うようになりました。大切な人がいるから、その人と過ごす場所をそうじしたい。大切な日がやってくるから、その日はそうじをして迎えたい。それが私のそうじに対する想いです。
今年も残りわずかとなってきました。年末の大掃除は、ゆく年に感謝し、くる年をお出迎えするためのおもてなしだと思います。
特別な時には、特別なおそうじを。
この一冊で涙を流した後なら、今までとは少し違った感情で年末の大掃除に取り組めると思いますよ。

 
おそうじ本舗 松本中央店
藤沢 洋子
http://osouji-matsumotochuuouten.com/index.html

住所:長野県松本市県1-16-1
電話:0120-913-108

 
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