膵がん は、こうして見つかる。【健康があいことばvol.09】

膵がん は、こうして見つかる。

~ 健康があいことばvol.09 ~
医療の発展により、がん全体の5年生存率はおよそ60%を超えます。しかし、「膵がん(すいがん)」に限って見てみると、その数字は1/10以下の5%ほどまで激減します。なぜ膵がんの5年生存率はそこまで低いのでしょう。消化器病センターの新倉医師に伺ってきました。

膵がん

相澤病院 副院長、消化器病 センター長
新倉 則和

◇ 膵がんを患う人の特徴

膵がんは高齢者の増加に伴い、増加傾向にあり、男女における罹患率に差があまりありません。喫煙によるリスクも1.7倍*と他のがんに比べ目立った数字ではなく、アルコールに至っては、膵がんのリスクを増大させる根拠は不十分、とまで言われています。
片や、二親等以内に2人以上膵がん患者さんを有する家系では、罹患率は6.8倍*まで高まります。今のところ膵がんと遺伝的要素の関係は明らかになっていませんが、健康診断の際その旨を医師に伝えることは重要です。とても小さな気付きが、膵がんの発見につながるかもしれないからです。
※日本膵臓学会「膵がん診療ガイドライン」参照
 

◇ なぜ、膵がんの5年生存率は低い

現代医療の発展により、がん全体の5年生存率は60%を越えています。一方、膵がんの5年生存率だけは群を抜いて低く、わずか5%程度まで落ち込みます。
ただし、ステージ2~4の進行がんだけで比較してみると、膵がんに限らずどんながんも同様に生存率は低くなります。実は、膵がんとがん全体の5年生存率にここまで大きな差が開くのは、膵がんの早期発見が非常に難しいからです。逆に言えば、膵がんも早期発見が可能になれば、今よりも格段に5年生存率は改善されます。
 

◇ 早期発見が難しい2つの理由

膵がんの早期発見が難しい理由は、大きく2つあります。
1つが、その臓器の位置です。膵臓は胃の背側、上腹部超音波検査でも観察しづらい場所にあるため、人間ドックを定期的に受けていても膵がんの早期発見は非常に困難です。
2つ目は、早い段階で周囲組織に浸潤する膵がんの性質です。膵がん以外では、2㎝以下であれば非常に高い確率で根治可能です。しかし、膵がんでは2㎝ほどの大きさとなると、がんが膵臓のまわりの神経や血管にくいこんでいることがあり、すでに手術できる状態ではない場合が多くなるからです。
 

◇ 膵がんの手がかりをつかむ人間ドック

先日、国立がんセンターが、血液一滴に含まれる「マイクロRNA」を計測すれば、膵がんを含む13種類のがんの有無を95%診断できる、と発表しました。とても素晴らしいことだと思います。しかし、まだその検査法は臨床の現場で立証されておらず、保険診療のレベルにも至っていません。
現段階ではっきり言えるのは、血液検査で「アミラーゼ」が基準値を超えた場合や、新規に糖尿病を指摘されたり、糖尿病のコントロールが急に悪くなった場合が危険だということです。また、上腹部超音波検査で2㎝以下の膵がんを発見するのは、膵体・尾部を中心に困難ですが、「膵のう胞」や「膵管拡張」を指摘された場合には、膵がんが隠れていることもあるため、CTやMRIなどの精密検査が必要となります。
このように、人間ドックの項目にある血液検査や超音波検査で、その手がかりを掴むことは可能な場合もあり、もし、人間ドックで異常を指摘された場合には、絶対に放置せず、必ず精密検査を受けましょう。
 

◇ 膵がんを見極める3つの精密検査

人間ドックなどで要精密検査となった場合、3つの精密検査で膵がんを見極めます。造影剤を用いた「造影CT検査」、強力な磁場を使って撮影する「MRI検査」、胃カメラ同様に内視鏡を用いた「超音波内視鏡検査」です。基本的にはこれらの検査を組み合わせて、膵がんを見つけます。
 

◇ 早期に膵がんを見つける超音波内視鏡検査

超音波内視鏡検査は、1㎝のがんを8~9割見つけられる検査方法です。そのため、最も優れた膵臓の精密検査と言っても過言ではありません。しかし、超音波内視鏡を扱える医師が少なく、検査を受けることができるのは、地域の大きな病院のみです。
相澤病院では超音波内視鏡検査を造影CT検査やMRI検査と組み合わせて行い、それぞれの検査の弱点を補い、膵がんの早期発見に努めています。
 

◇ 急性膵炎より慢性膵炎が恐ろしい

急性膵炎はお酒の飲みすぎであったり、胆管の結石が膵液の出口にひっかかったりして発症する病気です。男性、特に中高年層に多く、比較的短期間で回復する軽症から、全身の臓器障害によって死に至る重症まで様々なケースがあります。ただ、今のところ急性膵炎と膵がんの関係は確認されていません。
しかし、膵臓に持続性の炎症を引き起こす慢性膵炎を患っている方は注意が必要です。原因の第一はアルコールであり、膵がんの発病率が高い傾向にあります。定期的な検診をおすすめします。
 

◇ 血糖値の急激な変化は膵がんを疑え

膵がんは、初期症状がほとんどないことも特徴です。時折、進行がんには腹痛や背骨の痛みなどの症状が見られますが、早期の段階では、稀に胆管のすぐ脇に発生した膵がんの患者さんで、黄疸が現れる程度です。
しかし、血糖値の急上昇は非常に危険な膵がんのシグナルです。今まで正常だった血糖値が突然異常値を示した、あるいは、糖尿病の治療中で、急に血糖値のコントロールができなくなった、そんな方は膵がんの可能性が疑われます。
 

◇ 相澤病院の取り組み

相澤病院では、検査体制はもちろん、治療体制の充実にも注力しています。手術が困難な膵がんには、抗がん剤や放射線治療を中心に、先進がん治療の陽子線治療を組み合わせて行うなど、最適な治療を選択できるように整備しています。
それと共に、私たちが大切にしているのは、「がん」についての知識を多くの方に深めていただき、「検診の重要性」を認識していただくことです。膵がんから命を救うには、早期発見が一番です。
これからも相澤病院では、がんに対する啓蒙活動を行いつつ、膵がんの診断と治療について研鑽していきます。

 
■相澤病院 消化器病センターとは■
http://www.ai-hosp.or.jp/shinryo/shokaki_center.html
日本消化器病学会の認定施設として、消化管全般、肝臓、胆のう、膵臓の疾患に対し、外来から入院まで一貫した治療を行っている。がんの状態や症状に応じて、がん集学治療センターをはじめ他科と連携した治療も行っている。
 
相澤病院のサイトはこちら
http://www.ai-hosp.or.jp

 
ライター:上田雅也
※この記事は、コンパス第14号(平成29年9月29日発刊)に掲載されたものです。

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