喉の渇き と、糖尿病の関係【健康があいことばvol.08】

喉の渇き と、糖尿病の関係

6人に1人が「糖尿病」あるいは「糖尿病予備群」言われている今の日本。もはや国民病とも言える糖尿病とは。さらに、脱水と糖尿病の関係や、夏だからこそ気をつけるべきこととは。のどの渇きと糖尿病について糖尿病専門医の山下医師にお話を伺ってきました。

喉の渇き

相澤病院 糖尿病センター長
山下 浩

 

◇ 意外と知らない糖尿病

糖尿病とは、一言で言えば「インスリンというホルモンの働きが不十分になり、血糖値(血中のブドウ糖の濃度)が慢性的に高くなる病気」です。初期症状が乏しいため、糖尿病と診断されてもすぐには治療へとつながりづらい特徴があります。
糖尿病はそれ自体が恐ろしいというよりも、合併症を引き起こすから怖いと言われている病気です。成人の失明の主な原因の「網膜症」、足の切断につながりうる「神経障害」、人工透析が必要となる大きな原因の「腎症」の三大合併症を筆頭に、合併症が大きく日常生活に支障を来すからです。また、糖尿病は動脈硬化を進行させるため、脳梗塞や心筋梗塞を引き起こします。さらに最近では、歯周病や認知症との密接な関係もわかってきています。
 

◇ 「喉が渇く」は糖尿病の症状の一つ

糖尿病は血中のブドウ糖濃度が高い病気です。血糖値が高くなればなるほど脱水を招き、喉が渇きます。
一方、人間の体は血糖値が上がりすぎると、ブドウ糖を水分とともに尿として排泄します。ですから、血糖値が高ければ高いほど尿の量が増えます。そして、体から排泄される水分が多ければ多いほど、やはり喉が渇きます。
糖尿病はほとんど症状がないと言われていますが、「のどの渇き」は糖尿病の症状でもあり、夏だから喉が渇くのか、糖尿病だから喉が渇くのかは慎重に見極める必要があります。
 

◇ 間違った水分補給が引き起こす急性の糖尿病

スポーツドリンクや清涼飲料水などを大量に飲み続けることによって引き起こされる急性の糖尿病を、ペットボトル症候群と言います。該当者は1日2ℓ以上のスポーツドリンクや清涼飲料水を飲む傾向にあります。
近年では、一見すると「水」である飲料が多く販売されていますが、味付の飲物はいくら透明でも糖分を含み、カロリーも0ではないことが多々あります。それらを水分補給のつもりで摂取し続けると逆に脱水を引き起こし、喉が渇いてさらに糖分を摂取して……と糖尿病に見られる悪循環が始まります。飲料を購入する際は成分表を見て「自分が何を飲んでいるのか」を確認しましょう。
メインとなる水分補給にはカロリーのない水やミネラルを含む麦茶、あるいはスポーツドリンクではなく経口補水液などを選びましょう。
 

◇ 夏、気をつけるべきこと

夏は食欲が不振になりやすい季節とあって、そうめん・ひやむぎ・冷やし中華などが食卓に並びがちです。しかし、それらは栄養としてはすべて炭水化物に分類されます。炭水化物は消化されると主にブドウ糖として腸から吸収され、血糖値を上昇させます。「暑いから」と、麺類ばかりに頼ると食事が偏り、糖尿病悪化のリスクを高めます。食事はバランスを良く考えて摂りましょう。
また、野菜から食べ始めることで、血糖値の急激な上昇を抑えられることもわかってきました(左図参照)。血糖値の急上昇はインスリンの過剰分泌を引き起こし、糖尿病の発症につながる危険性があるので、食事は食べる順番にも配慮しましょう。
また、夏はビールや酎ハイなど、アルコールの美味しい季節ですが、お酒は脱水の危険性を高めます。過剰摂取にはくれぐれもご注意ください。
 

◇ もし「血糖値が高い」と言われたら

健診などで「血糖値が高い」と言われたら、あなたは境界型高血糖、いわゆる「糖尿病予備群」か「糖尿病」です。まずは体重を増やさないように食事を見直し、運動を心掛けましょう。また、喫煙は体内のインスリンの働きを妨げるため、糖尿病の発症リスクを高めるばかりか、動脈硬化を促進させ、脳梗塞や心筋梗塞などの合併症のリスクも高めます。禁煙にも取り組みましょう。
糖尿病予備群(境界型高血糖)の方は、体重が2~3㎏落ちるだけで正常に戻ったり、逆に2~3㎏増えるだけで糖尿病を発症することがあります。糖尿病と正常の「境界」にあると判断されたら、甘く見ず、すぐにでも生活習慣を見直しましょう。
といっても、生活習慣、特に食生活や運動習慣を急に変えることは非常に困難です。医療機関に相談することをお勧めします。
 

◇ 糖尿病は治る?

糖尿病は継続して治療していくことが最も重要です。完治は困難な病気ですが、上手につきあっていくことは可能です。肥満があるならまずは肥満を是正し、筋肉をつける運動習慣を生活に取り入れましょう。筋肉量の増加は基礎代謝量を高め、肥満解消につながるからです。
最近、糖尿病の診断基準のひとつ「HbA1c(ヘモグロビン・エー・ワン・シー)は7%未満が目標」との情報が浸透し始めていますが、これは「誰もが7%未満を目標にせよ」というものではありません。むしろ、高齢者の治療目標として一律に7%を目指すことは、時として低血糖等の危険もあり、推奨されていません。HbA1cの目標値は、生活環境や年齢によって異なります。
 

◇ 糖尿病と上手につきあうために

糖尿病は危険な病気にもかかわらず、きちんとした治療を継続している人は6割ほどしかいないのが現状です。そこで相澤病院では、急性代謝失調や専門的な治療は当院が行い、体調が落ち着いてきたらかかりつけ医で様子を診ていく「2人主治医制」を導入しています。
糖尿病は、上手につきあっていけば過度に恐れる必要はありませんが、決して侮ってはならない病気です。特に「予備群」の方はこれからの暮らしを大きく左右する、人生の転換期にあります。今一度、自分の生活習慣に向き合い、糖尿病の予防に取り組みましょう。

 
■相澤病院 糖尿病センターとは■
http://www.ai-hosp.or.jp/shinryo/b_center_7.html
糖尿病専門医を中心に、糖尿病看護認定看護師や、糖尿病療養指導士の資格を持つ看護師、薬剤師、理学療法士、臨床検査技師、管理栄養士らで構成される専門家チーム「糖尿病療養支援チーム」が連携し、患者一人ひとりに最適な治療を目指している。
 
相澤病院のサイトはこちら
http://www.ai-hosp.or.jp

 
ライター:上田雅也
※この記事は、コンパス第13号(平成29年6月30日発刊)に掲載されたものです。

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