【相澤病院】 難聴 を知る

  1. 健康

相澤病院の「健康があいことば」
難聴 について

私たちは年中、暮らしの中で音楽に触れています。しかし、全ての人の聴覚は加齢とともに衰え、難聴は誰にでも起こりえます。そこで今回は、音楽をいつまでも楽しむために、耳の構造や難聴について、耳鼻咽喉科専門医の坂口医師にお話を伺ってきました。

相澤病院の「健康があいことば」vol.05

▼目次
1.「聴く」は「毛」が大切
2.聴覚は必ず衰える
3.厄介な耳鳴り
4.難聴は治らない?
5.突発性難聴とは
6.難聴の予防
7.めまいに関する、よくある勘違い
8.相澤病院の取り組み

難聴 を知る
相澤病院 耳鼻咽喉科 統括医長
耳鼻咽喉科 専門医
坂口 正範

1.「聴く」は「毛」が大切

耳は大きく「外耳」「中耳」「内耳」に分けられます。外耳は音を集め、中耳は音を増幅し、内耳は音を電気信号に変換して脳に伝達する役割を担います。内耳には有毛細胞と呼ばれる感覚細胞があり、文字通り細胞の表面に毛が何本も生えています。この毛が震えることで音は電気信号に置き換わり、脳へと伝達されます。ですから、毛が少なくなれば聞こえは悪くなり、難聴の原因となります。毛が少なくなる理由については、髪の毛と同じで年齢や遺伝的な要素などが考えられます。
 

2.聴覚は必ず衰える

聴力レベルは、音の強さを示す単位dB(デシベル)を使って計測します。健常者が聴き取れる最も小さな音が0dBで、数値が大きいほど大きな音になります。目安として、30〜40 dBが軽度の難聴、40〜60 dBが中度の難聴、70 dB以上が高度の難聴に分類され、両耳が70 dB以上だと身体障害者の対象となります。個人差はありますが、聴覚の衰えは30 代から数値に表れ始めます。そして、60代になると30 dB程度の軽度の難聴の方が増え、日常生活に少し影響が出始めます。一般的に、加齢による聴力低下は高音域から聞こえなくなります(図)。体温計や電子レンジの合図音が聞こえなくなったら、軽度の難聴を疑いましょう。

聴力分布

3.厄介な耳鳴り

多くの場合、耳鳴りは難聴の程度と比例します。高度の難聴ともなれば、耳鳴りも酷くなる傾向にあります。慢性的な耳鳴りに対する治療は、飲み薬が中心です。が、効果が認められることは多くはなく、耳鼻科でも対応に苦慮しているのが現状です。とはいえ、聞こえが悪く日常生活に支障をきたすようなら、耳鼻科に相談するべきです。補聴器の利用により耳鳴りが楽になる方もいるようです。また、疲れた時、静かな時は自然音(川のせせらぎ、小鳥のさえずりなど)のCDを流すのもいいでしょう。
 

4.難聴は治らない?

外耳・中耳の異常による難聴(伝音難聴)は、手術により治療可能な場合もありますが、たいていは補聴器の利用により聴力を補うこととなります。一方、内耳の異常による難聴(感音難聴)は、補聴器の利用によりボリュームを大きくしても、音の明瞭さに欠けることが多く、改善しないことが多々あります。治療は非常に困難で、飲み薬の服用が主となります。基本的には治らない感音難聴ですが、「突発性難聴」と「メニエール病」に限り治る可能性があります。現状では、治るかどうかは治療してみないとわかりませんが、一般的に難聴は、発症後一ヶ月で固定すると言われています。早期治療を心がけましょう。
 

5.突発性難聴とは

最近よく話題にのぼる「突発性難聴」とは、ある日突然「片方の耳」の聞こえが悪くなり、時にめまいを伴う原因不明の病気です。先述の通り、治る可能性のある感音難聴の一つです。当院では、突発性難聴が疑われる患者さんには入院していただき、点滴治療(神経の働きを良くするビタミンB12などの投与)を行っています。ちなみに、片方が突発性難聴になったからといって、もう一方も発症するとは限りません。むしろ両耳に発症する可能性はとても低いと言われています。
 

6.難聴の予防

難聴は全て、これと言った予防法がありません。ただ、難聴の原因の一つが「騒音」であることから、大きな音を聴かないことが難聴の予防と言えます。一般的には、「時間」よりも「ボリューム」が問題と言われています。日頃から大きすぎる音は控えるように心がけましょう。
 

7.めまいに関する、よくある勘違い

耳には三半規管というバランスを司る器官があります。この三半規管に異常が認められると、人は平衡感覚を失ったり、めまいをおこしたりします。しかし、耳の病気が原因のめまいは、症状は激しいものの一週間程度で必ず治ります。むしろ本当に恐ろしいのは、脳梗塞など頭の病気や、心筋梗塞など循環器の病気が原因のめまいです。家庭医学の進歩により、めまいで耳鼻科を受診される方が増えています。しかし、それでは一刻を争う病気の発見が遅れることもあります。めまいが酷い場合は救急外来や脳外科、循環器科を受診しましょう。
 

8.相澤病院の取り組み

相澤病院では、真珠腫性中耳炎にも対応しています。真珠腫性中耳炎は耳ダレが出る症状を伴い、真珠腫は骨を溶かす性質が強いため、放置すると顔面神経麻痺などを引き起こす恐ろしい耳の病気です。手術が唯一の治療法であり、当院でも対応しております。耳ダレが認められたら、すぐにかかりつけ医に相談しましょう。総じて、耳の治療は困難なものばかりです。いつまでも音楽を楽しむためにも、大きすぎる音は聴かないなど、日頃から耳を大切にしましょう。

 
■相澤病院 耳鼻咽喉科とは■
http://www.ai-hosp.or.jp/shinryo/dept_6.html
突発性難聴、耳性めまい、急性扁桃炎などの薬物治療を行う一方、真珠腫性中耳炎などの手術も行う。頻度の多い疾患ではクリニカルパスを作成し、患者満足度の向上、入院期間の短縮を心がけ診療にあたる。
 
相澤病院のサイトはこちら
http://www.ai-hosp.or.jp

 
ライター:上田雅也
※この記事は、コンパス第10号(平成27年9月30日発刊)に掲載されたものです。

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