脳卒中 について【健康があいことばvol.02】

  1. 健康

脳卒中 について【健康があいことばvol.02】

〜知っておくべき「 脳卒中 」のあれこれ〜
 
日本人の死因で4番目に多く、後遺症も心配な「 脳卒中 」。
その治療は時間との勝負と言われています。今回は万が一に備え、家族や友人と共有しておきたい「脳卒中」について、脳卒中専門医の北澤先生にお話を伺いました。

脳卒中 専門医_北澤医師

相澤病院 診療部 副部長(外科系)
脳卒中・脳神経センター長
北澤和夫

◇ 脳卒中とは

脳卒中とは、脳の血管の障害が起こる病気です。脳卒中には、脳の血管が詰まる「脳梗塞(のうこうそく)」と、脳の血管が破れて出血する「脳出血」や「くも膜下出血」があります。脳梗塞が約7割、脳出血が約2割で、高齢になるほど脳卒中になりやすくなります。
 

◇ 脳梗塞の種類

脳梗塞は大きく3つに分類されています。細い血管が詰まる脳梗塞(ラクナ梗塞)、太い血管が詰まる脳梗塞(アテローム血栓性脳梗塞)、そして、心臓などから血栓(血の塊)が流れて来て、脳の太い血管を詰まらせる脳梗塞(心原性脳塞栓症)です。詰まる血管が太いほど重症化する傾向にありますが、細い血管が詰まっても、その場所しだいで片麻痺や言語障害など、重い後遺症が現れます。
 

◇ 心臓が原因の脳梗塞

脳梗塞は、必ずしも脳血管の動脈硬化が原因とは限りません。最も重症化する恐れが高い脳梗塞の原因は不整脈です。心臓から血栓が流れてきて、脳の太い血管を詰まらせる脳梗塞です。健康な人が突然発症したり、高齢者に多く発症するという特徴があります。
 

◇ 高齢化と脳梗塞

「心房細動」をご存知でしょうか。これは不整脈の一種です。脈の打ち方が不規則になると、心臓の血が滞って血栓ができやすくなります。この血栓が心臓を出て脳の太い血管を詰まらせ、脳梗塞を引き起こします。再発を起こす危険な脳梗塞です。心房細動は高齢者に多く見られる不整脈ですが、若く健康な方にも認めます。近年、心房細動患者における脳梗塞予防の新薬使用が可能になりました。不整脈が心配な方は循環器内科へ、脳梗塞が気になる方は脳神経外科または神経内科へ相談してみてください。

脳卒中 既往歴

◇「いま」の脳梗塞の治療法

医療の進歩により、最近は「頭を切らない」身体に優しい治療が可能なケースが増えています。「t-PA(ティー・ピー・エー)療法」はその一つです。これは点滴により血栓を溶かす治療法ですが、この点滴だけで劇的な回復を果たした事例はいくつもあります。「血管内治療(血栓回収療法)」もまた、切らない治療法です。血管からカテーテルと呼ばれる専用の管を通して血栓を取り除く治療です。いま最も注目されている治療法です。しかし、何より大切なのは「リハビリ」です。リハビリは全ての人を対象とする治療法です。例えば、点滴で脳梗塞を治す「t-PA療法」の対象者はごくわずかです。それは、この治療が発症から4時間半以内に限定された治療法だからです。当院はt-PA療法を実施できる病院ですが、それでもその対象者は、脳梗塞患者の1割未満です。やはり発症から4時間半という時間制限は大きな壁です。

脳卒中 発症3ヶ月後の状態

◇ リハビリの重要性

脳梗塞に限らず、リハビリは脳卒中すべてに非常に重要です。十分なリスク管理のもとに、できるだけ早期から積極的なリハビリが強く勧められており、より良い回復につながります。そのため、当院ではリハビリスタッフが365日勤務し、脳卒中患者は土日を問わず、毎日リハビリを行います。また、早期に言語聴覚士が介入し、言語や摂食・嚥下機能(食べる力)を評価します。可能な限り後遺症を軽減し、誤嚥性肺炎(水や食べ物が誤って肺に入ることで起こる肺炎)などの合併症を防ぐためです。
 

◇ あれ?と思ったらすぐ病院へ

脳卒中には早期治療が重要です。「タイム・イズ・マネー(時は金なり)」にちなみ「タイム・イズ・ブレイン」という言葉があるほど、時間の損失は脳の損失につながります。特に「片側の手足や顔の麻痺」「片目が見えなくなる」「ろれつが回らない」「言葉が出てこない」といった症状が出た場合は、すぐに診察を受けましょう。仮に数分でその発作がとまっても、必ず受診してください。一過性脳虚血発作という病気の可能性があります。これは脳梗塞の前触れとも言われ、その後に脳梗塞を起こしやすく、軽視してはいけません。
 

◇ 予防

高血圧、糖尿病、血中のコレステロールが高い生活習慣病の方は、適切な治療を受けることが脳梗塞予防につながります。これらの病気はライフスタイルに関係します。喫煙、食べすぎ、運動不足には十分に注意しましょう。相澤健康センターでは、脳ドックの受診も可能です。高血圧、高脂血症、糖尿病、喫煙、大量飲酒、運動不足の方や、脳卒中の家族歴がある方は、一度受診なさってみるのはいかがでしょうか。

 
■相澤病院 脳卒中・脳神経センターとは■
http://www.ai-hosp.or.jp/shinryo/b_nocenter/
神経救急、脳卒中診療、脳・神経疾患一般を扱う施設。特に脳卒中診療では、チーム医療を実践し、急性期血行再建や超早期リハビリテーションなどに積極的に取り組み、早期診断、早期治療、早期回復を目指しています。
 
相澤病院のサイトはこちら
http://www.ai-hosp.or.jp

 
ライター:上田雅也
※この記事は、コンパス第7号(平成27年12月30日発刊)に掲載されたものです。

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